商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

アメリカ作柄進捗 2021/06/14 

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こんにちわ。白戸則道です。

昨日発表された作柄報告についてまとめます。

 

 

今年のコーン大豆の作付けは早い

今年はかなり作付けのペースが早く過去10年でみても最も早いペースで作付けが進捗しました。大豆・コーンともに過去5年平均よりも10日から14日程度早いペースでした以下記事に過去実績対比での作付進捗の推移について記載していますので参考にして見てください。

sakimono-toushi.hatenablog.jp 

以下はコーンの作付の進捗率(茶色線)、発芽率(緑色線)のチャートです。作付は5月末にはほぼ完了し、また発芽進捗も6月14日時点で90%を上回っており、作付けおよび発芽がほぼ完了といいうステージに来ています。

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コーン作付・発芽進捗チャート

生育状況はじわじわ悪化中

作付けが早期に完了したことは、生産量を決定するための作付け面積を確定させることであり、供給量に安心感をもたらす材料です。実際作付けが順調に進んだことで5月中は相場は弱い地合いで推移しておりましたが、5月下旬以後発芽したものを見てみると、作柄がじわじわと悪化しています。

以下チャートは2017年から2021年の5年間のGEレシオの推移です。赤線が2021年、つまり現在生育中のクロップの様子を表しています。GEレシオについては以下記事を参照ください。簡単にいうと5段階評価の上位2クラス(ExcellentとGood)の割合です。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

初期つまり5月下旬ではGEレシオは75%を超えていましたが、その後北米での降雨不足が取り沙汰されており、GEレシオも急激に悪化しています。昨日の発表では68%まで落ちています。先週時点で72%、昨年同時期は71%でした。¥

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コーン作柄進捗

GEレシオ68%というのはマズいのか?

GEレシオが落ちているというのは事実ですが、それほど心配な状況とは言えないと思います。というのも上位2クラスの割合が67%ですが、下位2クラスの割合は5%でこれは二週間変動していません。つまりGEレシオが悪化した分三番目の評価である”Fair”に落ちているクロップの割合が増えているということです。

このFairの評価ですが、まだ挽回することができるクロップとみなされています。今後まとまった降雨があれば戻ってくる可能性は十分ありえると思われます。

 

大豆もコーン同様に早い進捗

次に大豆を見ていきましょう。

大豆もコーン同様に過去平均と比べて順調に作付が進捗しました。6月14日時点で94%の進捗ですので、ほぼ作付完了といえます。先週は90%、前年同期は88%でした。以下チャートの茶色線が作付進捗の線です。

これらの作付けされたもののうち、6月14日時点で、86%が発芽完了しています。過去5年平均は74%と比べてみても発芽ペースが早いことが確認できます。

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大豆作付・発芽進捗チャート

大豆の作柄も悪化

コーン同様に大豆も産地での乾燥が懸念されています。

6月14日時点のGEレシオは62%、先週は67%でしたから5ポイント悪化、昨年同時期は72%であったことと比較しても良好とは言い難い状況と言えます。

 

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大豆作柄進捗

Poor・Very Poorが増えている

コーンについては、上位2クラスであるExcellentとGoodが減った分は3段階目であるFairに落ちていると申しましたが、大豆については、じわりと下位2クラスであるPoorとVery Poorが増えてきています。

先週時点ではPoor Very Poorはそれぞれ5%と1%で合計6%でしたが、今週は6%と2%で合計8%に増えています。現時点で決定的にマズい状況とは言えませんが、少し気になるところです。GEレシオの割合でみても過去5年の中で2019年の次に悪い水準となっています。

 

まとめ

コーン大豆ともにスタートはかなり良好であったと言えます。そして作付けが早いペースで進行したこと、作付け期にシカゴ相場が高値圏であったこともあり、作付け面積はかなり増えていると思われますが、その後作柄がじわじわ悪化していることが懸念材料です。産地側では乾燥を懸念するニュースがちらほら出ていますので、引き続き注意が必要です。

現時点では、乾燥懸念がでているエリアはアメリカの北部エリアですので、大豆にはそれほど大きなインパクトはないのではないかという気がしていますが、今回の発表でPoorとVery Poorがじわりと増えていることは少し気持ち悪いなと思います。

作柄というファンダメンタルズの材料は上げ材料と提供しているにも関わらず、ファンド勢の投げ売りでコーン大豆ともに月曜火曜と相場を下げています。なぜ彼らがこのタイミングでウリ浴びせているのか、理由がよくわかりません。思ったより悪くなかったということなのでしょうか。あるいは、乾燥のニュースによるインパクトは限定的と見ているのか。

まだまだ波乱がありそうな気がします。いい波が来るのを待ちたいですね。

 

 

 

ファンドマネーの動向 2021/6/8

 

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こんにちわ。白戸則道です。

先週金曜日に発表されたCOTレポートの内容について見ていきます。

 

 

COT(コミットメントオブトレーダーズ)は持ち高公表資料

COTというのは、アメリカ政府が週に一度、各種のプレイヤーが現在どのような持ち高をしているのかを公表するというものです。ファンド、実需家、小規模投資家など、それぞれがどのようなポジションを持っているのか、を提示してくれます。これを定点観測するとそれぞれのプレイヤーが買いに行っているのか、売りに行っているのかを、確実にみることができます。

毎週金曜日に発表されますが、データは毎週火曜日の市場クローズ時点の持ち高を発表しています。若干のタイムラグがあるのが厄介なところです。しかしながら、データ集計の都合上致し方ない、という話だそうです。

なぜわざわざ公開するのかというと、市場参加者の公平性を担保するためです。特に小規模投資家にとっては資金力に物を言わせるファンド勢が買いなのか、売りなのかを、労せずして知れるというのは有り難いことです。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

コーン相場は下落からの戻し基調

5月頭に7ドル30セントをつけたところから、5月26日には6ドルをつける水準まで下落し、その後6月8日時点では6ドル80セント近辺まで戻すという値動きでした。

作付が順調に進んだという安堵感と、中国の輸出キャンセルの噂が重なり相場を大きく下げたところから、直近では乾燥懸念が相場を押し上げているという地合いかと思います。

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シカゴコーン7月限チャート

ファンドは買い越しポジションを縮小

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コーンポジション持ち高推移

直近の6月8日(火)終了時点では前週の250,632枚から236,556枚へと、14千枚ポジションを縮小させています。この一週間の間ではコーン相場はさほど動いていませんので、乾燥懸念により実需家が買いを入れる裏でファンド勢が粛々と売りを建てていたものと思われます。相場を下げずに利益確定の売りを入れるというのはファンド勢はかなりハッピーな売りであったというところでしょう。

 

 

大豆も上昇基調、だった

大豆もコーンと同様に5月の上旬から5月下旬にかけて、作付が順調に進むことをみて下げのトレンドとなり、その後は乾燥傾向のニュースに引っ張られる形で上昇という流れです。

6月1日(火)引け後から、6月8日(火)までの間は上げたり下げたりしながらですが、上昇トレンドは継続していました。

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シカゴ大豆7月限チャート

ファンド勢は若干のロング積み増し

シカゴコーンはファンドは売りに動きましたが、ファンド勢は若干のロングの積み増しに動いています。6月1日終了時点で91,382枚のロングに対して、6月8日終了時点では95,060枚のロングですので約4,000枚の積み増し。ほとんど変化なしの様子見というところかと思います。

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大豆ポジション持ち高推移

今後の展開の見通し

大豆コーンともに言えることですが、6月8日(火)終了後、水・木・金で下落方向に相場が動いています。

6月10日(木)にアメリカ農務省レポートが発表されており、内容自体は強い地合を確認するものであったと言えるので、これがきっかけというのは少し妙な話なのですが、市場参加者の感覚からすると、予想通りに強い、という内容の確認であったのだろうと思います。

そうすると短期的には需給要因による上げ材料出尽くしという印象があるのかと思います。

大豆については、大豆油が大幅に下落したことで原料である大豆も下落しているという流れです。大豆油は10年に2−3度レベルの高値にいたこともあり、いよいよ需要がなくなる(=代替原料にシフト)すると見込まれているということなのでしょう。

お天気次第の相場

毎年のことにはなりますが、いよいよ材料は出揃った感じがありますので、あとはお天気次第、もっと言えばどのくらい雨が降るか、ということに相場の焦点が集まりそうです。先週までには乾燥傾向が取り沙汰されていましたが、この週末で状況が改善しそうであるという話がちらほら出ていました。今週の作柄報告で状況が悪くないと確認されてくるとダラダラと下げの波がくる可能性はありそうです。

逆に、乾燥がやばいという材料が出ると急激に跳ね上がるという可能性もあります。というか実際にそのような年もありましたので、まだまだ安心はできません。

まさにお天気次第の相場、天候相場の到来ですね。

イチ消費者の目線からすると、マイルドな暑さでほどほどに雨が降って、基礎穀物の価格が落ち着いてくれることを祈ります。

 

USDAレポートレビュー 2021年6月

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こんにちわ。白戸則道です。

6月のアメリカ農務省(USDA)レポートが発表されました。内容についてレビューしたいと思います。

 

 

総括:発表直前に強い発表を期待して上昇、その後確定売り

今回の発表内容は、内容をみるとコーンは強い内容、大豆、小麦は若干弱い内容となりました。というか大豆と小麦はほとんど変化なしと言っても良いくらい変化ポイントは小さかったです。コーンについて、事前に変動が想定されていた以下項目については予想通りそれなりに動きはありました。

  • 20年度アメリカのコーン需要、主にエタノールと輸出需要がどの程度上方修正されるか
  • 20年度ブラジル産コーンの減産幅はどの程度になるか
  • 21年度中国のコーン輸入数量の見通しをあげてくるか

事前予想については以下記事にまとめております。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

内容を見るとサプライズな内容とは言えず、事前予想の範囲と言える内容でした。結果とし発表前にじわじわ上昇した相場が発表後には落ち着きを取り戻した形で値を下げた格好です。以下詳細を見ていきます。

 

アメリカコーン需要増加で期末在庫減少

前月の発表と比較してみると、2020年度クロップにおいては、生産量は変化なし。昨年の秋に収穫が完了しているので変化ないのは当然ですが。

変化があったのは、エタノール需要が4975百万ブッシェルから5050百万ブッシェルに上方修正されたことと、輸出需要が2775百万ブッシェルから2850百万ブッシェルに上方修正されたことの二点のみです。

この結果、期末在庫は1257百万ブッシェルから1107百万ブッシェルに下方修正となり、期末在庫率も8.45%から7.37%へ下方修正されました。

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2020年度アメリカコーン需給バランス 

 

エタノール需要が順調

5月以後エタノール生産は順調です。アメリカ経済の復調からガソリン需要も増大しており、自動車燃料であるエタノールの需要が増大しています。現在のペースが維持されるとなると5月のアメリカ農務省の数値は過小評価である、と前々から言われていたことなので、特に大きな驚きはなく、現実に合わせて変更してきた、という印象です。エタノール需要の状況については以下記事にまとめております。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

輸出需要も順調

輸出も順調に推移しています。すでに5月末の段階で2720百万ブッシェル相当が輸出されており、前月のアメリカ農務省予想は通年で2775百万ブッシェルとしていましたから、実に98%の輸出がすでに完了しているということになっていました。アメリカのコーンのクロップ年度の区切りは8月31日ですから、残りの13週間で輸出が激減するというシナリオでないとおかしな話になると言われていたものです。

今回、前月の2775百万ブッシェルから2850百万ブッシェルに上方修正されましたが、これでも引き続き95%は輸出完了ということになります。確かに6月以後は南米産コーンに価格競争力が出るというのはありますが、2850百万ブッシェルで足りるのか、さらに上方修正される余地もありそうです。 

ブラジル産コーン生産量減少

ブラジルは現在旱魃でヒットしており、生育期のコーンがダメージを受けています。これを受けて4月以後続々と生産量見通しが下方修正されています。以下に複数の機関の生産量予想を示しています。アメリカ農務省(=USDA)も先月時点では102百万トンとしていましたが、今月の発表では98.5百万トンに下げてきています。

しかしながら、他の予想をみると95百万トン近辺が多いですが、直近の情報ではこの水準すら大きすぎるとも言われており、90百万トン割れの可能性も十分あると言われています。

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ブラジル産コーン生産量予想

中国の輸入数量は変化なし

21年度の中国のコーン輸入量が増えるのか、という論点もありましたが、今回の発表では、20年度と同様に21年度も26百万トンから変更なしです。市場の認識としては30百万トン規模になるのではないかという噂も出ておりますが、今回は変更するに足る情報は出ていないということなのでしょう。今後の中国の生産量見通しなどが出てくるところですので、注意して見ていきたいところです。

 

アメリカ大豆は需要減少 

大豆については需要が減少しました。これもすでにある程度事前予想から言われていた話です。すでにさまざまなレポートでアメリカ国内での搾油量が減っていることが報告されていました。大豆油の需要減少については以下記事にまとめておりますが、大豆油価格が高騰しすぎたため、需要が減ってしまうという、いわば市場による需給調整が働いている局面と言えます。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

大豆搾油量は前月の2190百万ブッシェルから2175百万ブッシェルに下方修正されました。これにより、期末在庫も増えて、120百万ブッシェルから135百万ブッシェルに増加。期末在庫率は2.63%から2.97%に上昇となりました。

需要が減ったことで期末在庫が少しマシになったとはいえ、引き続き期末在庫率は歴史的な低水準です。スズメの涙程度に改善したのね、というのが市場参加者の感想かなと思います。

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アメリカ大豆需給バランス

20年度世界期末在庫はコーン減少、大豆増、麦微減

コーンは米国の国内需要、輸出需要増加、またブラジルの生産量減少により3百万トン近く減少。大豆は、アメリカの需要減少に加えて、ブラジルの生産量増加により、1.5百万トンの増加。小麦はアメリカからの輸出需要の増加により1百万の減少となりました。

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20年度クロップ世界期末在庫

 

21年度クロップ期末在庫はコーン減少、小麦増加

コーンについては20年度クロップの期末在庫の減少(3百万トン減少)が、そのまま21年度の期初在庫の減少となり、現時点では生産量の増加調整が入っていないため、そのまま21年度の期末在庫の減少(2.9百万トン減少)となっています。

大豆は変化なし。

小麦は、ヨーロッパ(3.5百万トン増加)ロシア(1百万トン増加)などが貢献して生産量は4百万トン近く増加となりました。しかし飼料需要が2百万トン増加すると見られており、期末在庫の増加は2百万トン程度となっています。小麦の飼料需要の増加は、コーンの不作と連動する話ですね。しばらく小麦/コーンに比価が小さい状況が継続するという話かもしれません。

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21年度クロップ世界期末在庫

 

まとめ

コーンの不足感が意識される地合いとなっているように思えます。作柄は現時点では悪くないのですが、北米コーンの乾燥懸念がかなり相場を動かす力が強くなっています。

需給要因で考えると、すでに強い材料は出尽くした感じはありますので、今後天気の心配が解消されてくると一気に売りが進む可能性もありそうです。

逆に、乾燥傾向が本格化してくるとさらに高値を追うという展開も十分ありそうです。お天気相場の中ではポジション取得しづらいですが、待ちも相場ということで焦らず、マーケットインのタイミングを狙っていきたいと思います。

アメリカ農務省レポートの事前予想 2021年6月

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こんにちわ。白戸則道です。

6月10日(木)の深夜に、アメリカ農務省レポートが公開されます。今後の相場展開を占うにあたって、事前予想をまとめてみます。

 

 

発表は6月10日アメリ東部標準時正午

毎月情報が更新されて発表されますが、次の発表は6月10日(木)アメリ東部標準時の正午です。つまり、日本時間では6月11日の深夜1時です。

そもそもアメリカ農務省の月次レポートととはなんぞや?に、ご興味あれば以下記事にまとめております。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

農業の進捗状況は広大な範囲をチェックしてみないと全体像が見えないので、アメリカ政府が情報を取りまとめて開示してくれるこの情報がやはり信頼感がありますので、市場参加者からすれば説得力のある材料になるのだと思います。

 

20年度クロップ予想

アメリカ産コーン・小麦減、大豆微増予想

アメリカ国内の期末在庫数量の予想を見てみます。市場関係者の事前予想平均とアメリカ農務省(USDA)の前回の発表値を比べると、コーンは1,257百万ブッシェルから1,198百万ブッシェルに59百万ブッシェルの下方修正。小麦は872百万ブッシェルから868百万ブッシェルに4百万ブッシェル下方修正。大豆は120百万ブッシェルから122百万ブッシェルへの下方修正と予想されています。

アメリカ国内での経済の回復基調から需要が増大する見込みであるというのが市場参加者の共通認識になっているということだと思います。特にコーンについては、燃料用エタノール需要が堅調であること、輸出のペースが順調すぎることを考えると、現状のアメリカ農務省の通年の予想値は、過小評価となっていると言われています。今月の発表でエタノール需要、輸出需要ともに上方修正してくる可能性は高そうです。

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20年度クロップアメリカ期末在庫予想

ブラジル産コーン減産は確定的

ブラジルおよびアルゼンチンの大豆コーンの生産量予想を見ると、ブラジルのコーン生産量の減少幅は気になるポイントです。すでにブラジル産コーンの二期作クロップが現在生育期ですが、ここに旱魃がヒットしており、生産量の減少が様々なソースで言われております。1億トンを下回ることは市場の共通認識となっていますが、90百万トンを下回ってくると想定よりも悪いとみなされる可能性はありそうです。

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20年度南米産コーン大豆生産量予想

ブラジル産コーンの減産については以下記事にまとめておりますのでご参考までに。
sakimono-toushi.hatenablog.jp

sakimono-toushi.hatenablog.jp

21年度クロップ予想

先月から21年度クロップの需給予想が出ています。21年度クロップとはコーン、大豆でいうと2021年の9月頃に収穫されてその後一年間使用されるクロップ、小麦で言えば2021年6月頃に収穫されてその後一年間使用されるクロップのことです。

現時点では未収穫のクロップの話になりますので、需要の予想よりも、生産量の予想に注目が集まります。このタイミングでは、生産量予想の増減が、期末在庫の増減に最も影響すると思います。

大豆、小麦については現時点で目立った減産予想はされておらず、前回と同様の水準の期末在庫と予想されています。

 

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21年度アメリカ産クロップ期末在庫予想

コーンの期末在庫は減少予想

コーンについては前回のアメリカ農務省の1,507百万ブッシェルに対して、事前予想平均は1,406百万ブッシェルと、101百万ブッシェル程度の減少が予想されています。

要因としては輸出成約が順調であるということが挙げられます。特に中国ですが、例年にないくらいのハイペースで買い付けを進めており、これをみて21年度も20年度と同程度の輸出数量に上方修正される可能性はありそうです。結果、アメリカの期末在庫は減少、というのが市場の予想なのだと思います。

アメリカの輸出成約のペースについては以下記事にまとめております。短くいうと、中国がキャンセルしてるという話はありますが、それ以上に買っているという話です。

sakimono-toushi.hatenablog.jp 

世界期末在庫を見てもコーンは減少予想

20年度および21年度ともに共通していえますが、大豆・小麦は前回の予想とあまり変化は想定されていません。

コーンについては、20年度の世界期末在庫が前回のアメリカ農務省(USDA)値283.5百万トンから事前予想平均280.2百万トンへ、3.3百万トンの減少。21年度は、アメリカ農務省の前回値292.3百万トンから事前予想平均287.7百万トンへ4.6百万トンの減少予想。

20年度クロップの需給環境もタイトですが、21年度も安心できる状況ではなさそうであるというのが市場の見解のようです。

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20年度世界期末在庫

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21年度世界期末在庫


まとめ

本日のアメリカ農務省レポートのポイントは以下です。

  • 20年度アメリカのコーン需要、主にエタノールと輸出需要がどの程度上方修正されるか
  • 20年度ブラジル産コーンの減産幅はどの程度になるか
  • 21年度中国のコーン輸入数量の見通しをあげてくるか
  • 20年度大豆アメリ国内需要は下がるか

列挙してみるとコーンの話題が多いような気がしますね。それだけ今年は中国のコーン買いという今まで起きなかった事態が起きていることの影響が大きいということなのかなと思います。

今夜の発表を待ちましょう。ではでは。

 


 

ファンドマネーの動向 2021/6/1

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こんにちわ。白戸則道です。

昨日、COTレポートが発表されました。内容についてみていこうと思います。

 

 

COTレポートとはなんぞや?

Commitment Of Traders(コミットメントオブトレーダーズ)というレポートで、市場参加者のポジションについて公開するものです。政府による取り決めで大口投資家は取引の状況を報告する義務があり、これに基づき、毎週火曜日終了時点のポジションを金曜の午後に、政府が公開しています。なぜ、アメリカ政府がそのようなことをしているのかという説明を以下記事に記載しておりますので、参考にされてみてください。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

 

シカゴコーンは上昇基調

過去二週間下げてきましたが、5月25日(火)終了以降、上昇に転じています。5月26日(水)には一時600セントに 迫るほどの大幅な下落を見せましたが、これを境に再度上昇しています。

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シカゴコーン7月限チャート

 この5月26日(水)の大幅な下落は、以下の記事にまとめておりますが、中国のコーンのキャンセルの噂が出たというものです。実際、少しキャンセルが出たというのは事実なのですが、数量とすれば百万トン程度の話です。反対に、中国の新規のコーン買い付けが5百万程度同じ週に立っており、中国のコーンの買い付けは順調、というか史上最速のペースで進んでいます。

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ファンドのロングが増え始めた

COTレポートで確認してみると、5月25日終了時点から6月1日終了時点で比べると、17千枚ロングが増えて、現在25万枚のロングです。今年の5月4日時点では35万枚のロングから、三週間のファンドの売りにより23万枚までロングが縮小していたのですが、ロングの積み増しに転じています。

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コーンポジション持ち高推移

コーン需要は安定

5月の間は次年度のクロップの作付が順調に進んだことで相場への安心感が漂っていたのかなと思います。一方で、アメリカ国内のエタノール需要や、中国の買い付けはむしろ増えているという材料もあります。

 エタノール需要はコロナ前水準に回復

アメリカ国内ではコーンを車のガソリンと混ぜて使用します。これからの夏のシーズンに向けてガソリン使用量は増えそうですので、これに応じてエタノールの使用・生産量が増えそうです。

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中国の買い付けは史上最速

以下記事でも整理しましたが、アメリカのコーンの輸出成約の累積を過去6年分と21年度の現時点の成約数量を示しています。白い線が21年度クロップの累積成約量を示しています。過去年度とは類を見ないペースで進捗していることが伺えます。

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アメリカ産コーン輸出成約

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次年度のクロップの作柄は良い

GEレシオが5月30日に発表されましたが、76%がGood or Excellentとされています。これは過去10年で3回しかないくらい良好な水準です。

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今後の天候が気になるところ

需要が強い、生産状況は悪くないという、強い材料と弱い材料と両方が見えている状況ですが、ファンド勢としては、今後の天候として乾燥による作物の生育不良の可能性を見ているのかもしれません。確かに、アメリカにおいては北部エリアつまりカナダとの州境あたりで、乾燥傾向が報告されています。

大豆も上昇基調に転換

コーンと同様に、過去二週間下げてきましたが、5月26日(水)終了以降、上昇に転じています。

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シカゴ大豆7月限チャート

ファンドのロング持ち高増加

価格チャートの動きと同じく、ファンドのポジションがこの二週間で4万枚近く売られていましたが、5月25日終了時点から6月1日終了時点の一週間の間では4千枚のロングが増えています。5月4日時点では126千枚のロング、その後三週間で売られて87千枚まで減少したのち、6月1日時点では91千枚のロングに増えているという動きです。

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大豆ポジション持ち高推移

大豆の需要は減少気味

アメリカ国内での大豆油価格が高騰しています。2008年につけた史上最高値を更新している状況です。これは大豆価格が高騰した結果、大豆油価格も上がっているということによるのですが、これにより大豆油需要が減退しているという調整が起きているようです。

全米油量種子加工業社組合(NOPA)による大豆圧搾量のレポートによると前月対比で1割近く減っており、大豆油需要の調整が起きていることが伺えます。

sakimono-toushi.hatenablog.jp 

大豆の作付、作柄は良好

需要が減っていることに加えて、作付は順調に推移しほぼ終了しました。作付後の状況も悪くないです。ということは、弱い材料がふたつ重なることになっているわけですが、大豆も直近の相場は上昇しています。

大豆に関して言えば、期末在庫率が2%という超絶逼迫状況になっていますので、多少需要が減ったとしても、安心できる水準にはほど遠い。むしろ、今植っている作物の状況が悪くなれば、来年度もかなり逼迫するという状況です。

コーンや小麦につられているというのはありますが、元々の状況がかなりタイトであるという背景は念頭に置く必要がありそうです。

ファンドマネーで相場上昇へ

作付が順調ですね、ということで下げの展開をしていましたが、そろそろ北米も本格的に暑くなってきますので、高温乾燥懸念が気になるところです。

しばらくはファンドマネーはロング方向にポジションを傾けていく可能性がありそうですので、しばらくはお天気を見ながら相場がじわじわ上がっていく時期になっていきそうです。

 

コーン由来エタノール生産は引き続き好調

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こんばんわ。白戸則道です。

本日はエタノール生産量の状況についてアップデートします。

 

 

引き続きエタノール生産は好調

二週間ほど前にエタノール生産量がコロナ前の水準近くまで回復してきている、状況について記載しました。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 今週発表された内容を見ても勢いは衰えておらず、順調です。アメリカのEIA(Energy Information Administration)が公表している生産量の週次の推移ですが、水色のラインが今年の推移です。直近公表されたのは5月29日までの週の生産量です。

同週は103万バレル/日のペースでの生産量となったようです。先週よりも2%増加、昨年対比35%増加。これはコロナによる需要の減退が主要因ですが、コロナ前の2019年の同時期と比べても1%減という水準です。水色の線をみるとわかりますが、今シーズン最高の数字となっています。

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米国エタノール生産量の週次推移(単位:千バレル/日)

 

ガソリン需要も好調を維持

ガソリン需要も好調です。アメリカにおける燃料用エタノールはE10という呼び方をされますが、ガソリンスタンドで売っている燃料ガソリンのうちの約10%相当ですから、エタノール需要の約9倍です。

実際に先週のガソリン需要を見てみると、915万バレル/日ですので、先週対比3.5%減、前年比3%減ではありますが、好調なレベルと言えそうです。アメリカではコロナワクチン接種が進んでおり、みなさんこれからの夏の休暇シーズンにはどんどん遊びに行こうぜ!というトーンのようですから、車を走らせて移動する需要はかなり増えていくだろうと予想されます。特に、今年は海外旅行はしづらいだろうなと思うと、国内移動する需要はかなり増える可能性もありそうですね。

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米国ガソリン需要週次推移(単位:千バレル/日)

エタノール需要は増える可能性が高い

今後もエタノール需要が現在のペースで維持されるとすると、エタノール需要は通年で5,085百万ブッシェルに達することになります。これは5月のUSDAの発表値よりも110百万ブッシェル多い数字となります。その分、期末在庫数量が減りますから、期末在庫率も減ることになります。USDAの発表値については以下記事ご参照ください。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

マーケット情報を提供しているIHS社の最新の需給試算をもとに計算すると、期末在庫率は7.36%まで落ち込むことになります。

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アメリカコーン需給バランス表

期末在庫率7.36%=コーン価格は6ドル近辺?

期末在庫が減るという話ですので、さらにコーン価格が上がるという話になるのですが、過去の期末在庫率とシカゴコーンの値位置のチャートをみると、7.36%程度であれば、シカゴコーンは6ドル近辺が妥当な価格レベルということになりそうです。現在の6ドル50セントは少し高い水準に思えてしまいます。

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期末在庫率とシカゴコーンの値位置

まとめ

アメリ国内需要が堅調に推移する可能性はある一方で、すでに現在のコーン価格は上がりすぎなようにも見えます。7月限は下落する方向に、9月限より期先の限月は上昇する方向に圧力がかかってくるのかもしれません。

アメリカ コーン作柄進捗

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こんばんわ。白戸則道です。

遅くなってしまいましたが、今週の作柄報告について記載したいと思います。

作付は無事終了

今年の大豆コーンの作付が過去10年で最速のペースで進んだということは以前の記事にも記載した通りです。そしてその後特に問題が起きることもなく、無事に作付はほぼ終了しました。今後、作付した種が無事に生育するかどうかが気になるところです。

GEレシオについて

アメリカという国はデータを収集するのが好きな国です。バスケットボールにしろ、ベースボールにしろ、プレイの内容をデータ化して統計を作るのが好きですよね。そして農業についてもデータ化して可視化して公表してくれます。いわゆるGEレシオと呼ばれるもので公表されます。これは、作物の状況を5段階で評価するシステムです。これをCrop Condition(作柄報告)と呼びますが、優良可不可、甲乙丙丁的な話で、上から順に以下の通りです。

  • Excellent
  • Good
  • Fair
  • Poor
  • Very Poor

そして、Good とExcellentに分類されたものの割合をGEレシオとして、良好な状況の作物の割合としてこの数字を作柄の指標として使用しています。

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GEレシオ推移

コーンは76%が良好

例年5月の末頃からコーンのCrop Conditionの報告が始まります。今年はGEレシオ76%でスタートしました。といっても、単年の数字だけではこの数字がいいのか悪いのか判然としませんので、例年と比べてみましょう。

過去10年で76%以上は3回

過去10年をみると、76%を超えた年は以下の通り3回ありました。

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過去の高GEレシオの年

2012年は初期GEレシオは過去最高だったのですが、その後旱魃が来たせいで、単収は大きく落ち込みました。以下チャートで大きく落ち込んでいるのが2012年です。他方、2014年と2018年はその後順調に進んで、良い数字となりました。2018年の176.4ブッシェル/エーカーというのは史上二番目の記録です。大旱魃が来ない限りは初期の数字が良い年と比較すると、今年もそれなりに期待はできそうであると言えそうです。

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1988年から2020年までの単収

州ごとの様子

全米平均で76%というのは2年前(2019年)の74%と同等のレベルですが、州ごとの様子をみると違いは見て取れます。

イリノイ州オハイオ州はGEレシオ80%

イリノイ州アメリカのコーン処として知られる場所です。今年は80%がGood or Excellentとランクされました。2年前の同時期では56%でした。そしてこの80%というのは過去10年の最高値です。オハイオ州も8割近いクロップがGood or Excellentとランクされており、昨年の62%を大きく上回っています。そしてイリノイオハイオともにすでに発芽の進捗も進んでいる状況でのこの数字ですので、信頼感のある作柄評価と言えるでしょう。

ノースダコタ州は乾燥気候の懸念有

ノースダコタ州は乾燥が懸念されています。現時点でGEレシオは48%と低く、これは昨年の73%を大きく下回ります。しかしながら、昨年は発芽進捗がかなり遅いうちでのGood or Excellentが73%、という数字でした。今年は発芽の進捗はかなり進んでおり、これを加味するとそれほど悪くないとも言える可能性はあります。今後ノースダコタの数字は注目する必要がありそうです。

州ごとの初期GEレシオは水物

州ごとでみると、初期GEレシオが悪くとも、挽回するケースもあります。例えば2017年のイリノイ州は初期GEレシオは52%しかありませんでしたが、その後夏に状況が改善していき、最終的にはその年にはイリノイ州は州としての史上最高の単収を記録することになったという事例もあります。現時点の数字ではまだ確定的なことは言えない、ということかと思います。

まとめ

現時点で新穀コーンの状況は悪くない、というかかなりいいと言えます。一方で需要も強いというのが気になるところです。輸出成約もエタノール生産も順調ですので、これをみると新穀も上げていく可能性もありそうです。

特に、現在の相場の地合いはファンドが動向を決めてしまうので、ポジションテイクしにいくというよりは、様子を眺めておくというのが良さそうな局面かなと思っています。

1日で10倍になる投資は、1日で10分の1になる可能性のある投資である、という言いまわしを聞いたこともあります。大波を乗りこなすにはそれなりの準備をしてから飛び込むようにしましょう。

ではまた。