商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

コーン先物トレード戦略 スプレッド取引

f:id:Norimichi_Shirato:20210709090459p:plain

こんにちわ。白戸則道です。本日はコーン先物取引におけるスプレッド取引について説明したいと思います。

 

 

毎年繰り返す動きを狙う

先物取引は商品の需給が基本です。そしてコーンや大豆などの一年草を例にとって考えると、収穫期は一年に一度しかありません。需給バランスの半分である供給要因は一年に一度決定されるというものです。なので、単年度ごとに供給要因の変動は1年サイクルで繰り返されるものといえます。

私が提唱する先物取引の根幹はこれです。季節性というロジックからして実現可能性の高そうな取引だけに取り組むというものです。チャートの形で判断するという方もいますが、私はロジックがよくわからず、あまり取り組んだことはないです。

そしてこの季節性取引の中で、単純な売り・買い以外にも、スプレッド取引というものがありますので、本日はスプレッド取引を紹介します。

 

スプレッド取引は売り・買いを同時に実行

先物取引には限月というものがあり、受け渡し月ごとに商品価格が取引されています。この限月の間の値差(=スプレッド)を取引するというものです。限月については以下記事も参照されてみてください。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

スプレッド取引の事例

仮に7月7日に9月限売り、12月限買いのスプレッドポジションを取得したとします。9月限の売値は550セント、12月限の買い値は530セントでした。その後8月10日に反対売買を行い、ポジションを閉じました。つまり9月限は買い、12月限は売りを立てたわけです。この時の価格は9月限は520セント、12月限は510セントでした。

さて損益はどうなるでしょうか。

9月限は550で売って、520で買い戻しているわけですから、+30セント、つまり利益が出ています。12月限は530で買ったものを510で売っているので、 マイナス20セントつまり損失が出ています。

しかしながら、合算すると9月限の利益が上回り10セントの利益が出たということになります。

f:id:Norimichi_Shirato:20210709091931p:plain

スプレッド取引損益事例

スプレッド取引は実行しやすいストラテジー

先物取引の実行なんて、売り・買いの注文出すだけだから簡単だ、と思うかもしれませんが、実際は思惑通りに実行できる人は稀です。というかほぼいません。理由は、先物市場の値動きと人のメンタルが合致しないためです。つまり、先物取引の日々の値動きの荒さに人が我慢しきれなくなる、ということです。以下にスプレッド取引の性質と人の性質とに分けて記載します。

<スプレッド取引の性質>短期の値動きが小さい

スプレッド取引は、異なる限月で反対売買をしているため、短期では値動きが小さくなります。例えば、9月限のコーンが10セント下落すると、多くの場合では12月限も同等の動きをします。

もし9月限のコーンが400セントの時に、12月限コーンが420セントだったとしましょう。もし9月限コーンが390セントに下がったのに、12月限コーンの価格が420セントのままだったとすれば、市場参加者は何をするか?私なら9月限でコーンを買い現物を受け取り、それを12月まで保管して12月渡しで売り渡します。保管料が20セント程度かかったとしても、10セントの儲けということになります。

実際はそんな美味しい展開は起きず、9月限と12月限は短期的にはほぼ連動します。9月限が10セント下がったら、12月限は9.5セント下がるという具合に。この場合は1日あたりの値差の変動は僅かに0.5セントです。

<人の性質>損失忌避バイアス

これはプロスペクト理論という学説でも解説されているものですが、人は利益が出る事による喜びよりも損失によるダメージの方を大きく感じる性質があるためです。これを損失忌避バイアスと呼びますが、これは人が進化の過程で習得した性質ですので、どうしようもないものです。

スプレッド取引で損失忌避バイアスを回避

日々の値動きの荒さは厄介な問題です。1ヶ月後には価格が下がっていると予想して、売りを建てたとしても一週間後に突発的なニュースで相場が上昇して評価損が出ることもあります。そして人は、評価損が出ていると冷静な判断ができなくなります。途端にストレスがかかり、取得したポジションを手仕舞いたくなり、実際にそのように振る舞う人が大半です。リーマンショックなどの暴落相場はまさにこの表れです。その後相場は落ち着きを取り戻し、もともと想定していたシナリオ通りに、価格が下がったのに、結局一時的な上昇局面で手仕舞ったため、手元に残ったのは損失だけ、、ということは、よく起こります。本当によく起こります。

スプレッドポジションと単純ポジョションの比較

スプレッドポジション(売りと買いを同数枚もつポジションのこと)を取得したAさんと、単純に9月限に売りを建てたBさんを例に比較してみましょう。9月限が10セント下落、12月限が9.5セント下落したケースとします。

Aさんスプレッドポジションを10ロット取得

1日あたりの変動が0.5セントであれば、変動は250ドルです。数週間かけてこの値差(=スプレッド)が拡大したり、閉じたりします。仮に10日続くと、2,500ドルになります。

Bさん単純に9月限だけを10枚売り

1日経った場合にどうなるでしょうか。1日で10セント下がったわけですから、翌日の朝のBさんの口座残高には、10ロットx10x50=5,000ドルの評価損が記載されています。これはあくまでも評価損ですので実現したわけではないのですが、最悪の気分の朝になります。私も経験ありますが、朝からやる気が半減します。 そしてこれ以上損失が膨らんで欲しくないと願いすぐに損切してしまいがちです。

 

まとめ

本日は、スプレッド取引について記載しました。

相場の値動きが荒いと気に、人が自分の考えを維持できない、という課題に対する一つの解決策かと思います。

実際やってみると、値動きが小さいのでポジションを取得しても日々変化がなく、つまらないともいえますが、損失を出してげんなりするよりはいいですよね。最悪なのは、単純ポジションを取得したものの一時的な相場の動きで損切りオーダーが発動し、実現損失だけを手元に残して相場が元に戻るという事態。私も何度も経験していますが、やり切れない気分になります。

値動きが荒い時こそ、スプレッドオーダーをうまく活用していきたいところですね。

それではまた。