商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

アメリカ作柄進捗 2021/07/04

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こんにちわ。白戸則道です。今週月曜日に発表された作柄報告についてまとめます。

 

コーンはシルキング開始

今年はコーンの作付けが例年よりも早いというのは以前の記事にも書きましたが、その後も順調に推移し、7月に入りシルキングが開始されています。下図のピンク色の線がシルキングの進捗率を示しています。7月4日時点で全米で10%程度の進捗。過去5年平均では同時期は14%の進捗ですから少しビハインドですが、誤差の範囲でしょう。

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コーン作付・発芽進捗チャート

sakimono-toushi.hatenablog.jp

GEレシオの低下は一旦止まった形

7月4日時点でGoodとExcellentとの割合の合計は64%となっており、過去5年の同時期は71%であったことと比較すると少し悪いといえます。今年は当初76%で始まったものの、ここまでズルズルと悪化してきており、状態の悪化が心配されていたところですが、一旦下げ止まったものです。

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コーン作柄進捗チャート

GEレシオとはなんぞや?という方は以下記事をご参照ください。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

 

シルキング=受粉

シルキングというのは受粉です。コーンは雄しべと雌しべが一つの花の中にはありません。隣の株の雄しべから花粉が風で飛ばされて、雌しべに付着するという形態で受粉します。

シルクと呼ばれるのはいわゆる雌しべです。この雌しべ部分に花粉が付着することでとうもろこしの粒が作られるわけです。

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コーンの受粉形態の説明図

hcvalor-navi.com

雌しべは乾燥に弱い

雌しべに花粉が付着することで受粉となりますが、この雌しべが乾燥に弱い代物です。アメリカ中西部の夏は湿気のないカラッとした夏です。カラッとしているというか、ギラギラしたという感じかもしれませんが、高温乾燥という事態がしばしば起きます。

いくら今までが良かったとしても、今後のシルキングステージで高温乾燥が来ると、受粉ができず穀粒ができませんので、収穫量が悪くなってしまいます。つまり、今後の天候状況が極めて重要な時期になってきているということです。

 

アメリカコーンベルトは降雨予報

アメリカのコーンの主要生産地であるアイオワ州イリノイ州ネブラスカ州ミネソタ州は降雨予報が出ており、いい感じに受粉が進むと期待されています。

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アメリカコーンベルトの降雨予報

 アメリカのコーン主要生産州については以下記事にまとめております。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

大豆も順調に開花が進む

大豆についても、コーン同様に今年は作付けが早く、その後も順調に推移ししてます。下図のピンク色線(Blooming;開花)ですが、今年の開花進捗は全米で29%に達しており、過去5年の同時期は24%ですから引き続き若干早い進捗が継続している状況です。

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大豆作付・発芽進捗チャート


 GEレシオは若干悪化

大豆のGEレシオは7月4日時点で59%、前週の60%から若干悪化していますが、6月上旬から産地での乾燥によりズルズルと悪化していたものから下げ止まった様子となっています。過去5年の中では二番目に悪い水準にいるのですが、今後の降雨予報もありそれなりに生産量が伸びる可能性もありそうです。

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大豆作柄進捗チャート

大豆の生育ステージにおける開花期

大豆は自家受粉しますので、コーンほど受粉期の天候に影響されはしないのですが、やはり花が咲かない事には、実がつきません。ほどほどの降雨と適温が必要です。開花期を過ぎると鞘ができる時期に入っていきますので、開花してその後どの位の鞘ができるかが重要なポイントとなります。そしてその後鞘の中で実が大きく育つかどうかも重要なポイントです。まだまだ気を抜かずにアメリカの天気をみながら右往左往する日々は続きそうです。

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大豆生育ステージ模式図

まとめ

アメリカでの乾燥懸念は一旦落ち着きを見せている状況で、GEレシオの低下が止まり、また天気予報をみても降雨が見込まれる状況となっており、少し相場の上げの勢いが緩んでいる状況です。しかしながら、これまでの乾燥によりダメージを受けている圃場での単収の低下が今後どのように出てくるのかは要注意です。

7月12日にはアメリカ農務省報告が出てきますのでここで単収の低下が出てくると再度相場に上昇の勢いをもたらす可能性もありそうです。