商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

アメリカ農務省レポートの事前予想 2021年6月

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こんにちわ。白戸則道です。

6月10日(木)の深夜に、アメリカ農務省レポートが公開されます。今後の相場展開を占うにあたって、事前予想をまとめてみます。

 

 

発表は6月10日アメリ東部標準時正午

毎月情報が更新されて発表されますが、次の発表は6月10日(木)アメリ東部標準時の正午です。つまり、日本時間では6月11日の深夜1時です。

そもそもアメリカ農務省の月次レポートととはなんぞや?に、ご興味あれば以下記事にまとめております。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

農業の進捗状況は広大な範囲をチェックしてみないと全体像が見えないので、アメリカ政府が情報を取りまとめて開示してくれるこの情報がやはり信頼感がありますので、市場参加者からすれば説得力のある材料になるのだと思います。

 

20年度クロップ予想

アメリカ産コーン・小麦減、大豆微増予想

アメリカ国内の期末在庫数量の予想を見てみます。市場関係者の事前予想平均とアメリカ農務省(USDA)の前回の発表値を比べると、コーンは1,257百万ブッシェルから1,198百万ブッシェルに59百万ブッシェルの下方修正。小麦は872百万ブッシェルから868百万ブッシェルに4百万ブッシェル下方修正。大豆は120百万ブッシェルから122百万ブッシェルへの下方修正と予想されています。

アメリカ国内での経済の回復基調から需要が増大する見込みであるというのが市場参加者の共通認識になっているということだと思います。特にコーンについては、燃料用エタノール需要が堅調であること、輸出のペースが順調すぎることを考えると、現状のアメリカ農務省の通年の予想値は、過小評価となっていると言われています。今月の発表でエタノール需要、輸出需要ともに上方修正してくる可能性は高そうです。

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20年度クロップアメリカ期末在庫予想

ブラジル産コーン減産は確定的

ブラジルおよびアルゼンチンの大豆コーンの生産量予想を見ると、ブラジルのコーン生産量の減少幅は気になるポイントです。すでにブラジル産コーンの二期作クロップが現在生育期ですが、ここに旱魃がヒットしており、生産量の減少が様々なソースで言われております。1億トンを下回ることは市場の共通認識となっていますが、90百万トンを下回ってくると想定よりも悪いとみなされる可能性はありそうです。

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20年度南米産コーン大豆生産量予想

ブラジル産コーンの減産については以下記事にまとめておりますのでご参考までに。
sakimono-toushi.hatenablog.jp

sakimono-toushi.hatenablog.jp

21年度クロップ予想

先月から21年度クロップの需給予想が出ています。21年度クロップとはコーン、大豆でいうと2021年の9月頃に収穫されてその後一年間使用されるクロップ、小麦で言えば2021年6月頃に収穫されてその後一年間使用されるクロップのことです。

現時点では未収穫のクロップの話になりますので、需要の予想よりも、生産量の予想に注目が集まります。このタイミングでは、生産量予想の増減が、期末在庫の増減に最も影響すると思います。

大豆、小麦については現時点で目立った減産予想はされておらず、前回と同様の水準の期末在庫と予想されています。

 

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21年度アメリカ産クロップ期末在庫予想

コーンの期末在庫は減少予想

コーンについては前回のアメリカ農務省の1,507百万ブッシェルに対して、事前予想平均は1,406百万ブッシェルと、101百万ブッシェル程度の減少が予想されています。

要因としては輸出成約が順調であるということが挙げられます。特に中国ですが、例年にないくらいのハイペースで買い付けを進めており、これをみて21年度も20年度と同程度の輸出数量に上方修正される可能性はありそうです。結果、アメリカの期末在庫は減少、というのが市場の予想なのだと思います。

アメリカの輸出成約のペースについては以下記事にまとめております。短くいうと、中国がキャンセルしてるという話はありますが、それ以上に買っているという話です。

sakimono-toushi.hatenablog.jp 

世界期末在庫を見てもコーンは減少予想

20年度および21年度ともに共通していえますが、大豆・小麦は前回の予想とあまり変化は想定されていません。

コーンについては、20年度の世界期末在庫が前回のアメリカ農務省(USDA)値283.5百万トンから事前予想平均280.2百万トンへ、3.3百万トンの減少。21年度は、アメリカ農務省の前回値292.3百万トンから事前予想平均287.7百万トンへ4.6百万トンの減少予想。

20年度クロップの需給環境もタイトですが、21年度も安心できる状況ではなさそうであるというのが市場の見解のようです。

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20年度世界期末在庫

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21年度世界期末在庫


まとめ

本日のアメリカ農務省レポートのポイントは以下です。

  • 20年度アメリカのコーン需要、主にエタノールと輸出需要がどの程度上方修正されるか
  • 20年度ブラジル産コーンの減産幅はどの程度になるか
  • 21年度中国のコーン輸入数量の見通しをあげてくるか
  • 20年度大豆アメリ国内需要は下がるか

列挙してみるとコーンの話題が多いような気がしますね。それだけ今年は中国のコーン買いという今まで起きなかった事態が起きていることの影響が大きいということなのかなと思います。

今夜の発表を待ちましょう。ではでは。