商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

ファンドのお金の動向

こんにちわ。白戸則道です。

本日は穀物市場にファンドのお金がどの程度入っているのかを調べる方法を解説します。

穀物市場におけるファンドマネー

穀物市場にファンドのお金が入っているというのは昔からよく言われる話ですが、最近はコロナ禍による経済対策のおかげで、世界中で通貨を発行しており、いわゆる”カネあまり”状態になっています。ジャブついたお金はリスク選好度の高い市場に入っていきます。株式や商品市場です。ファンドマネーは投機筋のお金ですから、なんとなく楽して金儲けをしている悪いヤツらというイメージかもしれません。が、私の考えでは、彼らがいてくれるおかげで売買が成立しやすくなる部分もあるため、全くいないよりはいた方がいいと思っています。

投機は金持ちが有利なゲーム

商品市場は取引金額規模が、為替市場や株式市場ほど大きくありませんので、金持ちが有利になりやすいです。

例えば、一日の取引量が1万枚の商材があったとしましょう。この市場に1枚ずつ取引をする人が1万人いるのかもしれませんし、10枚ずつ取引する人が1000人いるのかもしれません。それは、市場参加者からは見えません。しかし、もし貴方がこの市場で9,900枚を取引している人だったとすると、どうでしょうか。貴方以外のプレイヤーは全て合わせても100枚分しか取引がありません。つまり貴方からはこの市場には最大でも100人程度しかいないと見えるわけです。一方で貴方以外のプレイヤーには、見えません。つまり、市場規模をある程度カバーしてしまうだけの大きなポジションを持てる人には、市場参加者の数が見えやすくなるという有利さがあるのです。

情報格差を是正しましょう

一人で市場の99%を牛耳るという上の設例には無理がありますが、巨大ファンドが5社でそれぞれ10%程度のシェアを持つ・・と言われれば、あり得ると思いませんか。そんな危険な市場にノコノコ参加するとカモにされてしまう可能性がありますよね。危ない市場は使いたくない、誰も参加しない、市場の流動性が失われることになり得ます。

そこで情報格差を是正するために、アメリカの商品市場は、大口投機家および実需家の取り組み高を週に一度公表しています。つまり、小手の市場参加者にもある程度、市場参加者のポジション取りが見えるようにしているのです。これを実現するために、法律規制を設けており、大口投機家と実需家は取引内容をCFTC(Commodity Futures Trading Commission /商品先物取引委員会)に報告する必要があります。違反すると罰金刑があり、過去に日系商社が罰金刑を喰らったこともあります。

コミットメントオブトレーダーズ(COTレポート)

毎週金曜日の午後にコミットメントオブトレーダーズという名前で、どのようなプレイヤーが売り・買いのどんなポジションを持っているかが公表されます。これは、同じ週の火曜日の取引時間終了時点の状態を金曜日に報告するものです。下がCFTCのCOTレポートのページのリンクです。

www.cftc.gov

 

このページの下部にある上の赤丸の部分をクリックすると簡易バージョンが出てきます。この形式には3つの属性が記載されています。

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穀物に関連するCOTレポートの場所

実需家(Commercial)

市場をヘッジ目的で使用している人々。農家や商社など、現物取引に際してシカゴ市場でヘッジをするプレイヤー。現物取引がメインビジネスであるため、シカゴ相場の動きで損失を出しても現物で儲けが出るため、しばしば相場の動きとは反対にポジションを取る。

大口の投機家(Non-Commercial)

報告義務があるトレーダー。いわゆるファンドと呼ばれる存在。豊富な資金力でトレードから収益を上げる人々。相場の動きに合わせたポジションを取らないと収益を上げることは出来ないので、なんとかして、相場の動きに合わせたポジション取りをしようとする。

小口の投機家(Non Reportable)

報告義務のない小口のプレイヤー。一般投資家はここに該当します。

 

収益機会の見つけ方

大口投機家に追随する

大口投機家は豊富な資金力で相場の方向を形作ることがあるので、彼らのポジションがさほど大きくない時であれば、彼らの動く方向が、今後のトレンドになる可能性が高いです。小判鮫のように追随することで利益が出る可能性は十分あります。

反転タイミングに乗る

すでに大口投機家が一方向にポジションを建ててしまっている時には、そこから追随するのは危険です。投機家が建てたポジションは反対取引で消される運命にありますから、その状態から反転する可能性があります。トレンドがいつまでも続くと思って飛び込むと火傷する可能性がありますので、反転の兆しが見えるまで少し様子見して、反転し始めたところで入るというのが賢明かと思います。

 まとめ

相場の加熱具合を見るためのテクニカル分析もありますが、リアルなロング・ショートの実態が見えるこのレポートはファンドが市場をどう見ているかを知るために有用です。大勝負をかける時には、ファンダメンタル、テクニカルに加えて大口プレイヤーの動向も把握しておきたいものですね。