USDAレポートレビュー 2021年6月
こんにちわ。白戸則道です。
6月のアメリカ農務省(USDA)レポートが発表されました。内容についてレビューしたいと思います。
- 総括:発表直前に強い発表を期待して上昇、その後確定売り
- アメリカコーン需要増加で期末在庫減少
- ブラジル産コーン生産量減少
- 中国の輸入数量は変化なし
- アメリカ大豆は需要減少
- 20年度世界期末在庫はコーン減少、大豆増、麦微減
- 21年度クロップ期末在庫はコーン減少、小麦増加
- まとめ
総括:発表直前に強い発表を期待して上昇、その後確定売り
今回の発表内容は、内容をみるとコーンは強い内容、大豆、小麦は若干弱い内容となりました。というか大豆と小麦はほとんど変化なしと言っても良いくらい変化ポイントは小さかったです。コーンについて、事前に変動が想定されていた以下項目については予想通りそれなりに動きはありました。
事前予想については以下記事にまとめております。
内容を見るとサプライズな内容とは言えず、事前予想の範囲と言える内容でした。結果とし発表前にじわじわ上昇した相場が発表後には落ち着きを取り戻した形で値を下げた格好です。以下詳細を見ていきます。
アメリカコーン需要増加で期末在庫減少
前月の発表と比較してみると、2020年度クロップにおいては、生産量は変化なし。昨年の秋に収穫が完了しているので変化ないのは当然ですが。
変化があったのは、エタノール需要が4975百万ブッシェルから5050百万ブッシェルに上方修正されたことと、輸出需要が2775百万ブッシェルから2850百万ブッシェルに上方修正されたことの二点のみです。
この結果、期末在庫は1257百万ブッシェルから1107百万ブッシェルに下方修正となり、期末在庫率も8.45%から7.37%へ下方修正されました。
エタノール需要が順調
5月以後エタノール生産は順調です。アメリカ経済の復調からガソリン需要も増大しており、自動車燃料であるエタノールの需要が増大しています。現在のペースが維持されるとなると5月のアメリカ農務省の数値は過小評価である、と前々から言われていたことなので、特に大きな驚きはなく、現実に合わせて変更してきた、という印象です。エタノール需要の状況については以下記事にまとめております。
輸出需要も順調
輸出も順調に推移しています。すでに5月末の段階で2720百万ブッシェル相当が輸出されており、前月のアメリカ農務省予想は通年で2775百万ブッシェルとしていましたから、実に98%の輸出がすでに完了しているということになっていました。アメリカのコーンのクロップ年度の区切りは8月31日ですから、残りの13週間で輸出が激減するというシナリオでないとおかしな話になると言われていたものです。
今回、前月の2775百万ブッシェルから2850百万ブッシェルに上方修正されましたが、これでも引き続き95%は輸出完了ということになります。確かに6月以後は南米産コーンに価格競争力が出るというのはありますが、2850百万ブッシェルで足りるのか、さらに上方修正される余地もありそうです。
ブラジル産コーン生産量減少
ブラジルは現在旱魃でヒットしており、生育期のコーンがダメージを受けています。これを受けて4月以後続々と生産量見通しが下方修正されています。以下に複数の機関の生産量予想を示しています。アメリカ農務省(=USDA)も先月時点では102百万トンとしていましたが、今月の発表では98.5百万トンに下げてきています。
しかしながら、他の予想をみると95百万トン近辺が多いですが、直近の情報ではこの水準すら大きすぎるとも言われており、90百万トン割れの可能性も十分あると言われています。
中国の輸入数量は変化なし
21年度の中国のコーン輸入量が増えるのか、という論点もありましたが、今回の発表では、20年度と同様に21年度も26百万トンから変更なしです。市場の認識としては30百万トン規模になるのではないかという噂も出ておりますが、今回は変更するに足る情報は出ていないということなのでしょう。今後の中国の生産量見通しなどが出てくるところですので、注意して見ていきたいところです。
アメリカ大豆は需要減少
大豆については需要が減少しました。これもすでにある程度事前予想から言われていた話です。すでにさまざまなレポートでアメリカ国内での搾油量が減っていることが報告されていました。大豆油の需要減少については以下記事にまとめておりますが、大豆油価格が高騰しすぎたため、需要が減ってしまうという、いわば市場による需給調整が働いている局面と言えます。
大豆搾油量は前月の2190百万ブッシェルから2175百万ブッシェルに下方修正されました。これにより、期末在庫も増えて、120百万ブッシェルから135百万ブッシェルに増加。期末在庫率は2.63%から2.97%に上昇となりました。
需要が減ったことで期末在庫が少しマシになったとはいえ、引き続き期末在庫率は歴史的な低水準です。スズメの涙程度に改善したのね、というのが市場参加者の感想かなと思います。
20年度世界期末在庫はコーン減少、大豆増、麦微減
コーンは米国の国内需要、輸出需要増加、またブラジルの生産量減少により3百万トン近く減少。大豆は、アメリカの需要減少に加えて、ブラジルの生産量増加により、1.5百万トンの増加。小麦はアメリカからの輸出需要の増加により1百万の減少となりました。
21年度クロップ期末在庫はコーン減少、小麦増加
コーンについては20年度クロップの期末在庫の減少(3百万トン減少)が、そのまま21年度の期初在庫の減少となり、現時点では生産量の増加調整が入っていないため、そのまま21年度の期末在庫の減少(2.9百万トン減少)となっています。
大豆は変化なし。
小麦は、ヨーロッパ(3.5百万トン増加)ロシア(1百万トン増加)などが貢献して生産量は4百万トン近く増加となりました。しかし飼料需要が2百万トン増加すると見られており、期末在庫の増加は2百万トン程度となっています。小麦の飼料需要の増加は、コーンの不作と連動する話ですね。しばらく小麦/コーンに比価が小さい状況が継続するという話かもしれません。
まとめ
コーンの不足感が意識される地合いとなっているように思えます。作柄は現時点では悪くないのですが、北米コーンの乾燥懸念がかなり相場を動かす力が強くなっています。
需給要因で考えると、すでに強い材料は出尽くした感じはありますので、今後天気の心配が解消されてくると一気に売りが進む可能性もありそうです。
逆に、乾燥傾向が本格化してくるとさらに高値を追うという展開も十分ありそうです。お天気相場の中ではポジション取得しづらいですが、待ちも相場ということで焦らず、マーケットインのタイミングを狙っていきたいと思います。