商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

エタノール生産は好調

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こんにちわ。白戸則道です。

本日はエタノール生産量の最新状況アップデートです。

バイオエタノールアメリカの国内需要の4割を占める

日本では販売されていませんが、アメリカではガソリンスタンドにいくとE10と書かれたガソリンが売っています。これはエタノールを10%混合したガソリンです。15年ほど前からアメリカは市販ガソリンのうち一定割合にエタノールを混合することを義務として定めています。もちろんハイオクガソリンなど通常のガソリンも販売されていますが、ガソリン販売業者は販売総量に対して、一定の再生可能燃料を使用する義務を課されているものです。

 

毎週エタノール生産量が公表される

アメリカのEnergy Information Administration(EIA)と言う機関が毎週のエタノール生産量を公表しています。先週の内容については以下記事にまとめておりますので、ご参考まで。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

生産量は前週対比5.4%の増加

昨日(2021年5月19日)、5月10日から5月14日の週のアメリカのエタノール生産量が発表されました。前週は1日あたり979千バレル(=週あたり288 百万ガロン)でしたが、今週は1日あたり1,032千バレル(=週あたり303百万ガロン)に急増しました。

過去61週間を振り返ると最高値はコロナ禍による需要減退が始まる直前の2020年3月でしたので、コロナ前の水準に戻ったと言えます。そして前週からの増加幅で見ても、1日あたりで53千ブッシェルの生産量の増加となります。これは過去10週間で最大の増加幅です。

ちなみに前回の急増は、今年2月中旬の急激なジャンプです。これは2月中旬に寒波が到来し、エタノール製造工場が軒並みストップしたせいで、通常の生産ペースから急落してその翌週に急回復したという異常要因です。

異常事態であった2月の急増を除外して考えると、週次での生産量増加幅は、コロナ後の回復が始まった時期(2020年6月)以来の最大の増加幅であったと言えます。

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米国エタノール生産量の週次推移(単位:千ブッシェル/日)

USDAの年間生産量見通しを上回るペース

先週の生産量は2019年の同週の生産量を3.6%下回ってはいます。しかしながら、USDAの現在のエタノール向けコーン使用量の推定49億7500万ブッシェルに基づくと、2019年度のペースよりも約8.5%の下落ペースが続くとしないと辻褄が合わなくなります。

直近4週間のエタノール生産量は2019年対比6.6%減、過去11週間は2019年対比5.9%減となっています。明らかに現時点でUSDAが見込んでいる49億7500万ブッシェルに対して、オーバーペースで稼働しているといえます。

また前年の同時期との比較においても、2020年2月以来初めて2017年と2018年を上回り、今週の生産量は5月の第2週としては史上2番目の高水準であったと言えます。

 

需要は引き続き好調

史上最低の在庫水準を維持

生産量の急増にもかかわらず、先週の米国のエタノール在庫は、前週の815百万ガロン(19.39百万バレル)に対して816百万ガロン(19.43百万バレル)でほぼ変わらずで推移しており、2014年以来の最低水準となっています。

エタノールの需要動向を見ると、前週は1日あたり7.2百万バレル。この前の週は1日あたり7.9 百万ブッシェル、昨年同時期は1日あたり5.2百万バレル、2019年同時期は6.3百万ブッシェルでした。最近の4週間平均で見ると、エタノール需要は2019年の水準をわずかに0.9%下回るという水準でした。

エタノール需要が現在のUSDAの予測値を達成するペースよりも堅調に推移していることを示しており、今後も強い生産率が続く可能性は高そうです。

ガソリン需要は2020年3月以来の高水準

エタノール需要と同様に、アメリカ国内のガソリン需要は、前週の1日あたり8.8百万バレルから2021暦年の最高値である9.244百万バレルに急上昇し、昨年3月中旬以来の61週間ぶりの最高値となりました。 2019年と比較して、同週のガソリン需要は2.2%減となります。過去6週間平均では、2019年の同時期と比較して4.7%減となっています。

まだ2019年の同時期、つまりコロナ前の水準に戻ったとは言えませんが、かなり戻してきていると言えそうです。

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エタノール在庫

まとめ

アメリカ国内の需要の回復具合が在庫の減少に如実に出ていると思われます。アメリカでは6月にもマスク着用義務を解除するという話も出ていますから、今後の夏のシーズンにはさらにエタノール需要は伸びる可能性はありそうです。

ただ、アメリカ側でみなさんがマスクせずにうろつき始めると、コロナが再拡大を始める可能性も否定できないのではないかと思うのですが・・

どうなるんでしょうね。