商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

アメリカ農務省レポートの事前予想 2021年7月

f:id:Norimichi_Shirato:20210610074716p:plain

こんにちわ。白戸則道です。

7月12日(月)の深夜に7月のアメリカ農務省レポートが発表されます。今後の相場展開を占うにあたり事前予想をまとめたいと思います。

 

発表は7月12日アメリ東部標準時正午

毎月情報が更新されて発表されますが、次の発表は6月10日(木)アメリ東部標準時の正午です。つまり、日本時間では7月13日の深夜1時です。

そもそもアメリカ農務省の月次レポートととはなんぞや?に、ご興味あれば以下記事にまとめております。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

農業の進捗状況は広大な範囲をチェックしてみないと全体像が見えないので、アメリカ政府が情報を取りまとめて開示してくれるこの情報に信頼感がありますので、市場参加者からすれば説得力のある材料になるのだと思います。

 

20年度クロップ予想

アメリカ産コーン微減、大豆据置の予想

アメリカ国内の期末在庫数量の予想を見てみます。市場関係者の事前予想平均とアメリカ農務省(USDA)の前回の発表値を比べると、コーンは1,107百万ブッシェルから1,092百万ブッシェルに15百万ブッシェルの下方修正。大豆は135百万ブッシェルで据え置きという予想となっています。

国内需要および輸出需要の好調はすでにある程度織り込まれており、更なる期末在庫の減少の可能性は低いというのが市場の事前予想という状況です。

f:id:Norimichi_Shirato:20210709222047p:plain

アメリカ20年度コーン大豆期末在庫予想

ブラジル産コーンはさらに下方修正見込み

ブラジルにおいては二期作コーンが乾燥による被害を受けています。5月初旬から乾燥による生産量の減少が取り沙汰されておりますが、さらに状況は悪化しており、今回のアメリカ農務省発表では前月の98.5百万トンからさらに低下すると見られています。事前予想平均で91.8百万トンですが、レンジの下方値をみると87百万トンという見方もあり、90百万トンを下回る可能性も言われているという状況です。

f:id:Norimichi_Shirato:20210709222423p:plain

20年度南米産コーン大豆生産量予想

 

21年度クロップ予想

コーン生産量増加、大豆生産量減少予想

あくまでも市場関係者による事前予想ではありますが、事前予想平均をみると新穀コーンの生産量は15,031百万ブッシェルと前月のアメリカ農務省の数字である14,990百万ブッシェルを上回るであろうという見込みです。これは作付面積が上方修正されることが主要因です。しかしながら同時に単収の下方修正もされるのではなかろうか、という見立てになっています。前月のアメリカ農務省の数値では179.5ブッシェル/エーカーという数字でしたが、事前予想平均では177.8ブッシェル/エーカーとなっています。

f:id:Norimichi_Shirato:20210709222957p:plain

アメリカ21年度コーン大豆生産量予想

生産量減少により期末在庫も減少

上述の通り、生産量が減少する結果として新穀コーンの期末在庫も前月のアメリカ農務省報告値1,357百万ブッシェルから減少するという見立てがなされています。事前予想平均では1,304百万ブッシェルとなっています。

大豆も同様に前月のアメリカ農務省の数値である155百万ブッシェルから140百万ブッシェルへの下方修正予想。

小麦についてもコーンの高騰により飼料用小麦需要が増加することにより新穀年度の期末在庫も下方修正するのではないかというのが事前予想です。アメリカ農務省報告値770百万ブッシェルに対して719百万ブッシェルという事前予想になっています。

f:id:Norimichi_Shirato:20210709224031p:plain

アメリカ21年度期末在庫予想

世界期末在庫はコーン微増、大豆微減、小麦微減予想

ブラジルの減産による影響はあるものの、アメリカおよびウクライナの豊作がこれを打ち消す形でコーンの世界期末在庫は前月のアメリカ農務省の値である289.4百万トンから、事前予想平均値としては286.9百万トンへ3百万トン程度の減少見込みです。大豆、小麦についてはこのタイミングでは前月からほとんど変化なしであろうというのが事前予想となっています。

f:id:Norimichi_Shirato:20210709224551p:plain

21年度世界期末在庫

コーン単収の変更幅は限定的

市場関係者は「コーンの作付面積は増える、と同時に単収も下方修正されるだろう」と見ています。しかしながら、過去数年の実績を見るとアメリカ農務省は6月から7月になるタイミングでは単収の数字は変更していないことが多いです。少なくとも過去8年は全く変更していません。2012年は猛暑により圧倒的にクロップへのダメージが大きかったので下方修正しましたが、今年は現時点でそこまでの被害は報告されてません。ということを考えると、今月の発表では作付面積は増加させても、単収は据え置きとなる、結果として新穀コーンの生産量が上方修正される、という結果になるのではないかと思われます。

 

まとめ

今回の発表のポイントは、以下かなと思います。

  • アメリカ20年度コーン大豆期末在庫
  • アメリカ21年度コーン大豆生産量予想

特に21年度のコーンの生産量予想の数字については、市場予想よりも生産量が大きい数字が出る可能性はありそうです。アメリカ農務省が単収見通しを下方修正せずに、作付面積だけを増やして計算することが、市場関係者にとってのサプライズとなると、新穀限月が下落する可能性はありそうです。