商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

コーン相場の異変

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こんにちわ。白戸則道です。

本日はコーン相場の異変について状況をアップデートしようと思います。

今週のシカゴコーン相場は大荒れ

火曜日ストップ安、水曜日は突然30セント下落、同日中にすぐ戻す、木曜日はストップ高、とジェットコースターのような目まぐるしい相場付きでした。

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シカゴコーン7月限チャート

大幅下落は中国の買い付けキャンセルの噂

メインイシューは中国のコーン買い付けに関する情報です。

先日中国のコーン爆買いについては以下の記事にまとめましたので参考にされてみてください。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

sakimono-toushi.hatenablog.jp 

中国でのインフレ対策での投機マネー引き締めの噂

今週大きく下げた要因の一つ目は、中国側でのインフレ対策として政府当局による投機マネーへの牽制が発表されたことです。中国国内では引き続きコーン価格が高止まりしており、これに一役買っているのが、中国での投機筋のお金であると睨んだようです。政府として、具体的な方法論は提示していませんが、引き締めに入るという話が出ました。

実需筋のキャンセルの噂

次に出てきた話は、中国沿岸部での保税地区でのコーンの取り扱いについて規制をかけるという話です。上述の通り、国内コーンが高いのでコーンを輸入して加工して国内で転売するとかなり儲かります。儲け話に皆さんが飛び付きますから、民間の輸入が4−5百万トンあると言われていますが、この輸入許可を取りやめにするぞ、という話が出たとのことです。これを受けてアメリカ産コーンの買い付けのキャンセルが出ているのではないかという噂が出回りました。これら二つの情報で、火曜、水曜の大幅下落が起きました。

その後反転し、むしろ翌日にはストップ高

市場参加者が中国がキャンセルしているという噂を聞いて、相場はもっと崩れるかもしれない、と思って迎えたアメリカの木曜日の朝に、アメリカ政府から輸出成約高が発表されました。結果を見てみると、全然キャンセルしてないやん!ということが確認され、急にドカンとあげたというのが昨日の動きでした。

コーンの成約は来年度も順調に進んでいる

次年度クロップの買い付け状況

以下のチャートは中国の買い付けの様子を現したチャートです。9月から翌年9月まで、過去7年分の輸出成約高の累積チャートです。紫色は今年度クロップです。中国の輸入買い付けが入ったので過去数年よりも増えていることが見て取れます。

白い線が次クロップの輸出成約高です。過去数年と比べても異常とも言えるペースで成約が進んでいることが見て取れます。5月の終わり時点で昨年度のフルイヤーと同等の成約がすでになされているということになります。

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アメリカのコーン輸出成約数量(次年度クロップ)

今年度クロップの成約状況

今年度の成約についてのチャートです。これを見ても、全然キャンセルしてないやん、ということが見て取れます。

火、水に相場が急に暴落していたのは一体なんだったんだと言いたくなるくらい、結局買ってるやんという話だったわけです。

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アメリカのコーン輸出成約高(今年度クロップ)

今後の相場の展開

すでに相場の動きが全く予想できない展開になっています。というのも、相場を動かしているのが実需の動きを知っている人ではなく、穀物の現物の商売については素人の投機筋が慌てて売ったり買ったりしている状況となっています。

我々商社筋にも、中国のキャンセルの噂は聞こえてきましたが、実際キャンセルがあったとしてもせいぜい100万トンの話であり、むしろ数百万トン単位で買っていると見られるため、買い付け量の方が多いはずなのに、なぜファンドが投げ売りしているのかよくわからんな、と首を傾げていたところでした。

こういう訳のわからん相場の時は、アウトライトでポジションを取るのではなく、スプレッドや、オプションを組み合わせたやり方でマーケットインする方が良さそうです。

とはいえ、オプションの価格自体も原資産価格の変動で大きく動きますし、その動きが読みづらいと考えると、今はちょっとお休みした方が良さそうな地合なのかもしれませんね。

というわけで晩酌ビール買いに行ってきます。皆様良い週末をお過ごしください。ではでは。