商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

アメリカ コーン作柄進捗

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こんばんわ。白戸則道です。

遅くなってしまいましたが、今週の作柄報告について記載したいと思います。

作付は無事終了

今年の大豆コーンの作付が過去10年で最速のペースで進んだということは以前の記事にも記載した通りです。そしてその後特に問題が起きることもなく、無事に作付はほぼ終了しました。今後、作付した種が無事に生育するかどうかが気になるところです。

GEレシオについて

アメリカという国はデータを収集するのが好きな国です。バスケットボールにしろ、ベースボールにしろ、プレイの内容をデータ化して統計を作るのが好きですよね。そして農業についてもデータ化して可視化して公表してくれます。いわゆるGEレシオと呼ばれるもので公表されます。これは、作物の状況を5段階で評価するシステムです。これをCrop Condition(作柄報告)と呼びますが、優良可不可、甲乙丙丁的な話で、上から順に以下の通りです。

  • Excellent
  • Good
  • Fair
  • Poor
  • Very Poor

そして、Good とExcellentに分類されたものの割合をGEレシオとして、良好な状況の作物の割合としてこの数字を作柄の指標として使用しています。

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GEレシオ推移

コーンは76%が良好

例年5月の末頃からコーンのCrop Conditionの報告が始まります。今年はGEレシオ76%でスタートしました。といっても、単年の数字だけではこの数字がいいのか悪いのか判然としませんので、例年と比べてみましょう。

過去10年で76%以上は3回

過去10年をみると、76%を超えた年は以下の通り3回ありました。

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過去の高GEレシオの年

2012年は初期GEレシオは過去最高だったのですが、その後旱魃が来たせいで、単収は大きく落ち込みました。以下チャートで大きく落ち込んでいるのが2012年です。他方、2014年と2018年はその後順調に進んで、良い数字となりました。2018年の176.4ブッシェル/エーカーというのは史上二番目の記録です。大旱魃が来ない限りは初期の数字が良い年と比較すると、今年もそれなりに期待はできそうであると言えそうです。

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1988年から2020年までの単収

州ごとの様子

全米平均で76%というのは2年前(2019年)の74%と同等のレベルですが、州ごとの様子をみると違いは見て取れます。

イリノイ州オハイオ州はGEレシオ80%

イリノイ州アメリカのコーン処として知られる場所です。今年は80%がGood or Excellentとランクされました。2年前の同時期では56%でした。そしてこの80%というのは過去10年の最高値です。オハイオ州も8割近いクロップがGood or Excellentとランクされており、昨年の62%を大きく上回っています。そしてイリノイオハイオともにすでに発芽の進捗も進んでいる状況でのこの数字ですので、信頼感のある作柄評価と言えるでしょう。

ノースダコタ州は乾燥気候の懸念有

ノースダコタ州は乾燥が懸念されています。現時点でGEレシオは48%と低く、これは昨年の73%を大きく下回ります。しかしながら、昨年は発芽進捗がかなり遅いうちでのGood or Excellentが73%、という数字でした。今年は発芽の進捗はかなり進んでおり、これを加味するとそれほど悪くないとも言える可能性はあります。今後ノースダコタの数字は注目する必要がありそうです。

州ごとの初期GEレシオは水物

州ごとでみると、初期GEレシオが悪くとも、挽回するケースもあります。例えば2017年のイリノイ州は初期GEレシオは52%しかありませんでしたが、その後夏に状況が改善していき、最終的にはその年にはイリノイ州は州としての史上最高の単収を記録することになったという事例もあります。現時点の数字ではまだ確定的なことは言えない、ということかと思います。

まとめ

現時点で新穀コーンの状況は悪くない、というかかなりいいと言えます。一方で需要も強いというのが気になるところです。輸出成約もエタノール生産も順調ですので、これをみると新穀も上げていく可能性もありそうです。

特に、現在の相場の地合いはファンドが動向を決めてしまうので、ポジションテイクしにいくというよりは、様子を眺めておくというのが良さそうな局面かなと思っています。

1日で10倍になる投資は、1日で10分の1になる可能性のある投資である、という言いまわしを聞いたこともあります。大波を乗りこなすにはそれなりの準備をしてから飛び込むようにしましょう。

ではまた。