商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

ファンドマネーの動向 2021/6/1

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こんにちわ。白戸則道です。

昨日、COTレポートが発表されました。内容についてみていこうと思います。

 

 

COTレポートとはなんぞや?

Commitment Of Traders(コミットメントオブトレーダーズ)というレポートで、市場参加者のポジションについて公開するものです。政府による取り決めで大口投資家は取引の状況を報告する義務があり、これに基づき、毎週火曜日終了時点のポジションを金曜の午後に、政府が公開しています。なぜ、アメリカ政府がそのようなことをしているのかという説明を以下記事に記載しておりますので、参考にされてみてください。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

 

シカゴコーンは上昇基調

過去二週間下げてきましたが、5月25日(火)終了以降、上昇に転じています。5月26日(水)には一時600セントに 迫るほどの大幅な下落を見せましたが、これを境に再度上昇しています。

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シカゴコーン7月限チャート

 この5月26日(水)の大幅な下落は、以下の記事にまとめておりますが、中国のコーンのキャンセルの噂が出たというものです。実際、少しキャンセルが出たというのは事実なのですが、数量とすれば百万トン程度の話です。反対に、中国の新規のコーン買い付けが5百万程度同じ週に立っており、中国のコーンの買い付けは順調、というか史上最速のペースで進んでいます。

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ファンドのロングが増え始めた

COTレポートで確認してみると、5月25日終了時点から6月1日終了時点で比べると、17千枚ロングが増えて、現在25万枚のロングです。今年の5月4日時点では35万枚のロングから、三週間のファンドの売りにより23万枚までロングが縮小していたのですが、ロングの積み増しに転じています。

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コーンポジション持ち高推移

コーン需要は安定

5月の間は次年度のクロップの作付が順調に進んだことで相場への安心感が漂っていたのかなと思います。一方で、アメリカ国内のエタノール需要や、中国の買い付けはむしろ増えているという材料もあります。

 エタノール需要はコロナ前水準に回復

アメリカ国内ではコーンを車のガソリンと混ぜて使用します。これからの夏のシーズンに向けてガソリン使用量は増えそうですので、これに応じてエタノールの使用・生産量が増えそうです。

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中国の買い付けは史上最速

以下記事でも整理しましたが、アメリカのコーンの輸出成約の累積を過去6年分と21年度の現時点の成約数量を示しています。白い線が21年度クロップの累積成約量を示しています。過去年度とは類を見ないペースで進捗していることが伺えます。

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アメリカ産コーン輸出成約

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次年度のクロップの作柄は良い

GEレシオが5月30日に発表されましたが、76%がGood or Excellentとされています。これは過去10年で3回しかないくらい良好な水準です。

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今後の天候が気になるところ

需要が強い、生産状況は悪くないという、強い材料と弱い材料と両方が見えている状況ですが、ファンド勢としては、今後の天候として乾燥による作物の生育不良の可能性を見ているのかもしれません。確かに、アメリカにおいては北部エリアつまりカナダとの州境あたりで、乾燥傾向が報告されています。

大豆も上昇基調に転換

コーンと同様に、過去二週間下げてきましたが、5月26日(水)終了以降、上昇に転じています。

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シカゴ大豆7月限チャート

ファンドのロング持ち高増加

価格チャートの動きと同じく、ファンドのポジションがこの二週間で4万枚近く売られていましたが、5月25日終了時点から6月1日終了時点の一週間の間では4千枚のロングが増えています。5月4日時点では126千枚のロング、その後三週間で売られて87千枚まで減少したのち、6月1日時点では91千枚のロングに増えているという動きです。

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大豆ポジション持ち高推移

大豆の需要は減少気味

アメリカ国内での大豆油価格が高騰しています。2008年につけた史上最高値を更新している状況です。これは大豆価格が高騰した結果、大豆油価格も上がっているということによるのですが、これにより大豆油需要が減退しているという調整が起きているようです。

全米油量種子加工業社組合(NOPA)による大豆圧搾量のレポートによると前月対比で1割近く減っており、大豆油需要の調整が起きていることが伺えます。

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大豆の作付、作柄は良好

需要が減っていることに加えて、作付は順調に推移しほぼ終了しました。作付後の状況も悪くないです。ということは、弱い材料がふたつ重なることになっているわけですが、大豆も直近の相場は上昇しています。

大豆に関して言えば、期末在庫率が2%という超絶逼迫状況になっていますので、多少需要が減ったとしても、安心できる水準にはほど遠い。むしろ、今植っている作物の状況が悪くなれば、来年度もかなり逼迫するという状況です。

コーンや小麦につられているというのはありますが、元々の状況がかなりタイトであるという背景は念頭に置く必要がありそうです。

ファンドマネーで相場上昇へ

作付が順調ですね、ということで下げの展開をしていましたが、そろそろ北米も本格的に暑くなってきますので、高温乾燥懸念が気になるところです。

しばらくはファンドマネーはロング方向にポジションを傾けていく可能性がありそうですので、しばらくはお天気を見ながら相場がじわじわ上がっていく時期になっていきそうです。