商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

USDAレポート 2021年5月のレビュー

こんにちわ。白戸則道です。

本日は昨日のUSDA(アメリカ農務省)のWASDEレポートについてポイントを解説します。

総括:事前想定の範囲内であった

今回のレポートは、事前想定の範囲内であったと言えます。発表前にブラジルの減産や中国の買付をはやして、相場が上昇していましたが、いざレポートで発表された数字は事前に想定していた数字よりもマシである、ということで相場の上昇ペースが一旦止まり、ロングを積み重ねているファンド筋が利食いに動いたという状況と言えます。しかしながら、相場が本格的に下向き方向に転換したかどうかは難しいところです。というのも、市場参加者はブラジル産コーンについてはもっと減るとみているわけですし、中国の買付も実態とするともっと多いとみているわけです。今後、ブラジル側でものがないということが意識されるようなことがあると、現物在庫のタイト感が改めて意識されるということはありそうです。一時的に利食いで下げることはあるかもしれませんが、相場が冷えるのは6月末になって北半球の作付面積が確定してからと思った方がいいのかもしれません。

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USDAレポート発表後のシカゴコーン7月限チャート

 事前予想は以下記事にあります。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

20年度ブラジル産コーンの減産

前月発表値では生産量は109百万トンでしたが、102百万トンに下方修正されました。二期作コーンの生育中に旱魃が来ており、これによる生産量の減少として7百万トン減らしていますが、市場では100百万トンを下回る可能性も言われていたこともあり、「悪い数字が出ると思っていたら、それほど悪くなかった」という捉え方をされている様子です。

ブラジル産コーンの減産については以下記事に纏めております。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp 

21年度産ウクライナ産コーンは増産見込み

ウクライナは次の収穫で豊作を見込んでいます。今年度産は生産量として30百万トンであったものが、次年度は38百万トンに増える見込みです。今年の9月-10月の収穫で、現在作付がなされているものです。まだまだ天気がどうなるかわかりませんので、生産量見込みはまだまだ水ものです。すべて順調に行ったならば、という前提にはなると思いますが、ブラジル産コーンの減少はウクライナの増産でカバーされるような恰好になると言えそうです。 

中国のコーン輸入は26百万トンに上方修正

中国の20年度コーン輸入量は24百万トンから2百万トン増えて、26百万トンに上方修正されました。しかしながら、すでに報告されている輸出数量および既成約の実績を見るに、本当は30百万トンを超えてくるのではないか、とも言われています。今後さらに上方修正される可能性もあるかもしれません。 

さらに来年度も26百万トンの輸入を維持

来年度は中国の生産量は改善する見込みですが、それでもなお26百万トンの輸入をすると、アメリカ農務省が予想しています。これは市場参加者からすると、「26百万トンは十分ありえるだろうな」というトーンで受け止められており特に大きな驚きもなく材料視もされていない印象です。中国の輸入の状況および来年度の生産数量見込みについては以下記事を参照ください。
  

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

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21年度アメリカ産コーンの作付面積は控えめな数字

アメリカ農務省は3月に聴取した農家の作付意向面積を基に計算をしています。そしてこの数字は6月に作付完了後の状況調査まで、変更されることはありません。現時点で、91百万エーカーの作付面積で計算しています。しかし、3月から4月にかけて相場は急騰しています。コーンの作付面積はさらに1百万エーカー程度増える可能性も有と言われています。今後6月末に作付面積がアップデートされますので、そのときには大きく増える⇒生産量の上方修正はあるかもしれません。

まとめ

昨今の相場動向からすると、短期間にかなり駆け上がったこともあり、テクニカル指標も買われ過ぎのシグナルを出しています。という状況を考えると昨日のレポートは、BUY THE RUMOR SELL THE FACT(噂などの不確定情報による不安心理により買いが進み、実態が確認されると安心感から相場が下がる)という動きだったのかもしれません。

しかしながら、コーンの需給要因を冷静にみると期末在庫率は10%切れは堅いですし、大豆に至っては期末在庫は2%とさらにタイトです。また外部要因としても、インフレ懸念が強まっている環境ですから現物の値上がりの可能性はありそうな雰囲気です。これらのファンダメンタル材料を見ると、 このまま継続的な下げトレンドに入るとは考えづらいのではないかな、と思いますが、どうなることやら。