商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

ファンドマネーの動向 2021/5/18

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こんにちわ。白戸則道です。

先週金曜日にコミットメントオブトレーダーズが発表されました。内容をレビューします。

コミットメントオブトレーダーズとは?

コミットメントオブトレーダーズとは簡単にいうと、市場参加者がロング・ショートどのようにポジションを保有しているのかを公表するものです。なんで?そんな情報が公開される必要があるの?という点は以下記事にまとめましたのでご興味ある方はご一読ください。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

コーンは引き続きファンド売りが継続

このコミットメントオブトレーダーズは毎週金曜日に、同じ週の火曜日終了時点の状況が公開されるというものです。データ集計の都合上、3日分のタイムラグが出ますが、それでもある程度市場の変動の要因の答え合わせには有用です。

アクティブファンドのロングポジションは縮小に動いています。5月4日時点347,390枚のロングから5月11日302,635枚、5月18日259,407枚へと二週間で87,983枚減っていますので、ファンドの利食いが継続している状態と言えます。対照的に実需筋はショートポジションを減らしてきていることが読み取れます。インデックスファンドは今週は持ち高を増やす方向に動いたようです。

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コーンポジション持ち高推移

ファンド勢の売りが継続しシカゴは大幅下落

シカゴコーン7月限のチャートをみてみましょう。5月4日、5月11日、5月18日のところに青いラインを入れてみました。

今回の発表の期間である5月11日から5月18日の間にはシカゴは大きく下げました。730セントのレベルから630セントの水準まで三日間で大幅な下落です。

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シカゴ相場は大崩れ

相場下落の要因は来年度クロップへの期待

先週は5月12日に、アメリカ農務省の月次報告があったわけですが、これを受けて一気に相場が弱い方向に転換したことが確認できます。今月の農務省報告については、以下記事に詳細を記載しております。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 発表の内容を事態はそれほど、弱い内容ではなかったのですが、大まかに内容をまとめるならば以下のような内容です。

  • 中国の買い付けは来年も継続(強材料)
  • ブラジルは旱魃により供給量が減る見通し(強材料)
  • アメリカのコーン作付面積が大幅に増加(弱材料)

レポートの内容からすると、期末在庫は引き続き低水準ですのでそれほど弱い内容とは言えないです。後付けで理由を考えるとするならばファンドが積み上げたロングポジションを解消に動いた、というだけの話ではないかと思います。

 

大豆もファンド筋は売りムード

二週間前はファンドの売りはそれほど強くなかったのですが、前週はファンドの売りが進んでいます。5月11日時点で125,816枚のロングであったものが、5月18日時点では100,259枚のロングまで縮小されています。

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大豆ポジション持ち高推移

大豆相場も下落基調 

チャートを見るとむしろファンド売りは5/19-22の3日間の方が強かったのではないかと想像されます。

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シカゴ大豆7月限チャート


大豆相場の売り加速のきっかけは需要の減退か

今月は5月17日にNOPA(全米油量種子加工業者組合)による、圧搾量報告が出ました。この内容は、かなり弱い内容でした。というのも、4月の搾油量が大幅に減少していたという報告だったのです。相場の見方として考えると、やはり価格が高騰しすぎて、大豆油の需要が逃げてしまったと捉えることができます。そうすると大豆油の原料である大豆の実需の買いも減りますから、大豆相場が冷めされるという展開となったのかと思います。

今月のNOPA圧搾レポートについては、以下記事にまとめておりますので、ご興味あらばご一読ください。 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

今後の動向

4月後半から5月前半にかけての時期の異様な高騰はファンドからの資金の流入が大きな要因であったと言えそうです。というのも、4月後半の時期においては、アメリカ国内でインフレの加速懸念により、商品相場にお金が入っていたというものがあります。しかしながら、この動きが一旦収束したことから、ファンド勢が手仕舞いに入ったということかと思います。相場を煽ってさっと退場するあたりはちょっと迷惑な感はありますが、致し方ないですね。

この下落基調がいつまで続くのか、というのは、新穀の作柄懸念が出る時期までは弱いムードがじわじわ続くかもしれません。

すでに、アメリカにおいて大豆もコーンも作付けが60%、80%完了しており、作付面積の拡大はほぼ堅い状況と言えそうです。今後はこれらの作付面積が実際に確認される6月末の作付面積報告がまずは気になる報告ですが、そこである程度の面積が実際に確認されれば、弱い基調がさらに固まりそうです。

その後は、再度相場が持ち上がるのか、良好な天候でずるずると相場が落ちてくるのか、天気を見ながら一喜一憂するという状態になるのかな、と思います。