商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

シカゴコーン相場近況 2021/05/21

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こんにちわ。白戸則道です。

先週のシカゴ市場は上昇基調となりましたが、足元で見えている材料について整理したいと思います。

シカゴコーン市場は先週は上昇基調

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シカゴコーン7月限チャート

5/10,11あたりでは7ドル30セントをつけていたものが、5/12のUSDAの発表を受けてから急落しました。5/13,14にも続落し、3営業日で80セント値を崩すという猛烈な下げとなりました。その後、5/17-5/21の間の5営業日を終えて、シカゴ7月限は6ドル33セントをボトムに反発したような形となっています。すると、今後の展開として引き続き上げの展開が続くのかという気配もしますが、需給材料を見直してみましょう。

 

ブラジルの二期作コーンの減産

ブラジルでの旱魃によるコーンの減産は確定的な状況です。過去3年ぶりに年間生産量が1億トンを下回ると見られており、むしろ90百万トンも怪しいという声も出ています。

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ブラジルコーン生産量予想

Agro Consult社は二期作コーンの生産量見通しを15%引き下げ、通年での生産量見通しとして91百万トンに下方修正しています。USDAは102百万トンとしていますが、その他の生産量見通しは、95−96百万トンとなっております。今後その他の機関の発表も出てくる筈ですが、どの程度の落ち着いてくるのか、というのが市場参加者の興味となりそうです。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

ブラジルの減産11百万トンをウクライナアメリカでカバー

仮にブラジルの生産量が91百万トンに落ち着くと仮定すると、現状のUSDAの見込みである102百万トンから11百万トン減る計算になります。

一方で来年度も中国の輸入は今年度と同じ程度の輸入量が継続しそうです。その他の需要国の需要は安定しているので大きな変動はありません。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

とすると、11百万トン凹んだものをどこかの国でカバーする必要がありそうです。幸いにして、ウクライナと米国が現状は順調です。ともに作付が順調に進んでいますし、天候も悪くないです。 

ウクライナは7百万トン増産期待

ウクライナは今年度30百万トンに対して、来年度は37百万トンと、7百万トンの増加を見込んでいます。 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

アメリカは20百万トン増

アメリカも、4月のコーン相場の高騰をみて、農家の作付意欲は高まっていますので、作付面積が大幅に増加する見通しです。さらに、作付進捗も順調ですでに80%以上作付が終了しています。過去10年で一番進捗が早いです。

今年度アメリカのコーン生産量は360百万トンでしたが、来年度クロップをアメリカ農務省は380百万トンと予想しています。

アメリカは46百万トン増の可能性もあり

しかし、これはもっと増える可能性ありと指摘されています。以下記事にも纏めましたが、IHS社はさらに増えると見ており、生産量は406百万トンに達する可能性ありとしています。前年度対比で、46百万トンの増加です。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

現時点の予想では問題なくカバーできるが・・・

ウクライナ(+7百万トン)、アメリカ(+20百万トン)があるので、ブラジル(ー11百万トン)でも十分カバーできるね、という話になります。そして、ウクライナアメリカともに作付がほぼ終了していますので、作付面積が不足したという心配はあまりなさそうです。

しかしながら、まだまだ安心できる状況ではなさそうです。

アメリカのエタノール生産は好調を維持

アメリカではコロナワクチンの接種が順調に進み、経済が回復してきています。ワクチン接種が進むと人はお出かけしますので、ガソリン需要が増えます。ガソリン需要が伸びに合わせてバイオ燃料であるエタノールの需要も伸びています。実際先週発表されたエタノール生産量の統計を見ると、生産量はコロナ前の水準と同等になっていますが、在庫は史上最低レベルにまで落ちています。つまり生産量を上回るだけの需要がきている、ということですので、アメリカ国内のエタノール需要が強いことが見えます。

 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

 

生産量の計算あってる?

生産量の計算は、収穫面積 x 面積あたりの収穫量見込みで計算します。アメリカ農務省の計算を見ると、1エーカーあたり179.5ブッシェルで計算しています。

過去の史上最高は1エーカーあたり176.6ブッシェル

過去の最高値を見ると、17/18年度で176.6ブッシェルという水準は実現したことがあります。その後数年で農業技術も進歩しているとはいえ、本当にこれだけの面積で179.5ブッシェルという史上最高値を2%程度更新するという設定が現実的なのか?というのは要注意です。

176.6ブッシェルで計算すると、生産量は374百万トン

374百万トンの生産量は、今年度対比+14百万トンです。ウクライナの+7百万トンと合わせると、+21百万トンですので、ブラジルがー11百万トンであったとしても十分カバーできると言えそうです。

生産量360百万トンになるのは、169.7

今年と同等の生産量になったとなれば、ブラジルの減産をカバーすることは難しくなりそうです。このケースを想定すると、1エーカーあたり169.7ブッシェルまで落ちると、生産量は360 百万トン程度と計算されますので、この水準まで落ちるとちょっと危ないです。

直近であれば、15/16年度が168.4, 19/20年度が167.5ですので、過去5年のうち2年は170割れであったということになります。5年で2回ってことは40%の確率で170割れです。それなりの確率なような気もしますよね。。。

兎にも角にもアメリカの単収次第 

直近での大きなサプライズはブラジルの減産でしたがすでに相場に織り込まれている言えそうです。そして安心材料として、アメリカの作付が10日程度早く進捗し、大きなトラブルなくほぼ終了したということです。

しかしながら、結局のところ生育期の天候次第で、どちらにも転び得るというのが現時点で言えることです。

このまま順調に生育してくれれば、相場はまた四ドル割れまで戻ってくることもあるかもしれませんし、トラブルが出てくると急にタイト感が懸念されて再度七ドルを超える水準まで上がってくる可能性も否定できないというような状況です。

お天気相場の時期に突入ですね。