商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

中国のコーン爆買いは来年度も継続するのか?

こんにちわ。白戸則道です。

本日は中国のコーン爆買いが来年度も継続するのかについて考察します。

昨年収穫された中国のコーンが不足

中国の不作により、現在のシカゴ相場の高騰が起きていることは以前の記事でも紹介しました。 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

中国政府は自前での供給の方針は変えていない

先週、CNGOIC(中国食糧情報センター)が2021年度の作物の見通しを発表しました。曰く、

2021年度のコーンの生産量は2.7億トンとなる見込み

2020年度対比4.2%増

とのことで、中国の爆買いもある程度収まり、相場を冷やす材料となるか、と期待されます。

2021年度も今年と同等の輸入は続く可能性が高い

しかし、実態をよく見ると、生産量が伸びても需要の伸び次第では、昨年と同等の輸入が続く可能性はありそうです。以下の表は、過去5年分の中国のコーンの生産量です。先週のCNGOICの発表は2021の列に記入しました。

作付面積が前年の41.27百万haから3.3%増の42.63百万haに、そして単位面積あたりの収穫量も前年の6.32トン/haから6.38トン/haに1%向上。この二つのインパクトで生産量は272百万トン(前年比4.3%増)になるという試算です。

f:id:Norimichi_Shirato:20210511103029p:plain

中国のコーン生産

生産量の4.3%増の実現可能性はある

 作付面積の3.3%増加も、単収の向上も現実的には不可能ではないラインだと思います。作付面積の過去実績を見ると、2016年頃には44百万ha規模の作付をしていたわけですから、この程度の水準に回復させる、ということは、やれなくはないと思います。ただし、今まで耕作していなかった畑を戻したとして同じだけのパフォーマンスが出せるのかは少し疑問符はつきますが。

また単収の向上についても、世界の他の産地の単収と比較すると、アメリカは11トン/ha, アルゼンチンは8トン/haですので、アップサイドのポテンシャルはあります。ただし、アメリカとアルゼンチンはほとんどが遺伝子組み換えコーンですので、病害虫耐性があるなどの差はありあす。

需要増を加味すると20百万トン以上の輸入

過去5年平均を取ると4.8%のペースでコーンの需要量が増加しています。これを使用すると2021年の中国のコーン需要は303百万トンに達します。生産量が272百万トンに増えたとしても303百万トンと272百万トンの差分である、29百万トンは輸入で埋める必要がありそうです。今年度24百万トンの輸入見込に対して、次年度も同等かそれ以上の輸入が発生する可能性はありそうです。

中国の生産量と需要量の表を再掲します。輸入量(黄色に塗った行)の2021年に仮に25百万トンと置いたとしても、表の最下部供給量から需要量を差し引くと、6百万トンの不足です。中国の国家備蓄を6百万トン市場に出さないといけないということです。ただし、需要量の伸びを4.8%と置いているのですが、これ次第です。

f:id:Norimichi_Shirato:20210511103029p:plain

中国のコーン生産と需要

誰が中国を食わせるのか?

というタイトルの本が15年くらい前にはやりましたが、まさにその状況です。中国が自国の生産量の増加ではカバーしきれない状況が来年度も継続しますので、世界のコーン生産量の増加が鍵となります。

現在、 ブラジルの旱魃で、6百万トン規模での減産予想がすでに出ています。このインパクトを含めて今の値位置が妥当なのか、というのが次の検討事項になりそうです。明日のアメリカ農務省レポートで、ブラジル、アルゼンチンの減産幅は見どころのうちの一つですね。

まとめ

中国の生産量増予想が発表されましたが、その内容自体は実現不可能とは言いませんが、土地転用した後の畑の生産力の戻しがどの程度あるのか、というのは疑問です。そして需要の伸びが継続すると、生産量が増えても、国内需要を賄えない事態はありそうです。

中国政府としては、国内の経済成長が至上命題ですから、需要は伸びる方向にサポートが働く可能性を考えると、来年度のみならず再来年以後も中国の輸入量が現在と同等の規模となる可能性もありそうです。