商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

小麦の種類について

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こんにちわ。白戸則道です。

本日は小麦の種類について解説しようと思います。

 

 

小麦は種類が多い

小麦は世界中で取れる主食たる作物です。乾燥に強いのであちこちで収穫することができますので、広く植っています。そして世界中で植えられるようになる過程で数多くの品種改良が行われた結果、小麦は種類が多いです。そして、種類によって春に種を蒔く小麦もあれば、冬に種を蒔く小麦もあります。

 

作りたいものによって小麦粉も変わる

料理をされる人はご存知かと思いますが、作りたい料理によって適した小麦粉は異なります。ケーキを作りたい時は薄力粉、パンを作りたい時は強力粉、麺を作りたい時は、中力粉です。

イメージを簡単にいうと、ふわふわした食感のもの、例えばパンケーキやスポンジケーキお好み焼きなどを作りたい時は薄力粉を使います。カチッとした食感のもの、例えばフランスパンなどを作りたい時は、強力粉です。麺類や中華饅の饅頭を作りたい時は中力粉というイメージです。

 

主な違いはタンパク含有量

この小麦粉の違いは何かというと、主にタンパク質の量です。厳密にはその性質の違いとか澱粉質の性質の違いとかもあるのですが、主にはタンパク質の量です。タンパク質が多い小麦粉で作ると硬いもの、少ない小麦粉を使うと柔らかくふわふわしたものができます。

 

アメリカには3つの小麦市場がある

お料理教室みたいな話になってきましたが、本題に戻ります。 アメリカで一概に小麦相場といっても、厳密には3つの小麦相場があり、それぞれ取り扱う小麦が異なります。以下にそれぞれの相場について説明します。

シカゴ小麦相場

いわゆる最もメジャーな小麦相場です。取引量が最も多く一般に小麦相場、というとシカゴの小麦相場を指します。取扱う小麦はSoft Red Winter(ソフトレッドウインター)と呼ばれる品種の小麦です。名前の通り、Soft(柔らかい=タンパク質が少ない)、Red(赤みがかった穀粒)、Winter(冬に種蒔きする)小麦です。いわゆるパンケーキなどのタンパク分が少ない小麦粉に多く使われる品種です。生育エリアは中西部からオレゴン州あたりがメインです。

カンザス小麦相場

カンザスにある小麦相場です。 とはいってもすでに場立はなくなっており、全てE-tradeの筈ですが、発祥地がカンザスだったということですね。こちらの市場で取り扱う小麦は、Hard Red Winter種と呼ばれる小麦です。その名の通り、カンザス州界隈が主な生産地です。Hard (硬い=タンパク質が多い)、Red(赤みがかった穀粒の)Winter(冬に種蒔きをする)小麦です。これは中程度のタンパク含有量の小麦粉に多く使われます。麺類によく使われる品種です。麺といっても中華麺系です。うどんは別物です。

余談ですが、日本のうどんはアメリカのHard Red Winter小麦ではなく、オーストラリアの小麦を使います。香川県讃岐うどんは国産小麦じゃないの?と思われるかもしれませんが、大層はオーストラリアから輸入した小麦で作られます。もちろん国産小麦を使用している小麦粉で打っているうどんもありますが。このうどん用小麦は、数十年前に香川県とオーストラリア政府が共同でうどんに適した小麦を品種改良して作ったものですので、乾燥して作物があまり育たないオーストラリア政府が安定的に売れる小麦を作りたいという願いで開発したものだそうです。小麦って奥が深いですね。

ミネアポリス小麦相場

最後はミネアポリス小麦相場です。ミネアポリスアメリカの北部、カナダとの国境付近にある街です。この市場で取引される小麦は、Hard Red Springと呼ばれる品種の小麦です。Hard(硬い=タンパク質の多い)、Red(赤みがかった穀粒の)、Spring(春に種蒔きをする)小麦です。この小麦はタンパク含有量が多い小麦粉が作れますので、パンに適した小麦です。

ミネアポリス相場で取引される小麦は春に種蒔きをして秋に収穫する小麦です。つまり、コーンや大豆と同じ時期に植えられるものです。上で紹介したシカゴ小麦やカンザス小麦は冬に蒔いて、夏前に収穫する小麦ですので、時期がズレるものです。そして北米でも比較的温暖なエリアには、大豆やコーンが主に植えられれます。単位面積あたりの儲けが大きいためです。なので、春小麦を植える地域というのは、大豆やコーンの作付けには適さないようなアメリカ北部やカナダ南部のエリアになります。

 

小麦相場に影響を与えるイベント

小麦の作柄に影響を与える要素は大きく分けて二つあります。旱魃と降雨です。

まず、旱魃ですが、小麦は乾燥には強いのですが、やはり農産物ですので雨が全然降らないと穀粒の育ちが悪くなってしまいますので、生産量が落ちてしまいます。

そして降雨ですが、これは生育期の降雨は問題ないのですが、穂が出て、実がついた状態、つまり収穫の間際に雨に当たると、小麦のタンパク分が流れ落ちるようです。私も詳しいメカニズムは知らないのですが、どういうわけか収穫前に大雨が降ってしまうと、小麦のタンパク分が減ってしまい、食用の小麦として使用に適さなくなってしまい、結果これらは餌用の小麦になるということがあります。

 

春小麦と冬小麦では季節要因が異なる

上で述べたように、北米の小麦と言っても、植えられているエリアも異なれば、生育する時期も異なります。例えば、今の時期であれば、アメリカ北部地域は春小麦の作付の時期ですが、アメリカの南部エリアでは、冬小麦の収穫間際という具合です。

すると、アメリカで雨が降りました、というニュースだけでは、どのエリアのどの小麦に降っている小麦なのかがわからないので、シカゴ小麦、カンザス小麦、ミネアポリス小麦のどれに影響するニュースなのかは判別できません。収穫前の冬小麦がダメになった結果、シカゴ小麦やカンザス小麦が高騰するかもしれませんし、春小麦の作付時期の恵の雨となってミネアポリス小麦には弱い材料となる可能性もあります。

いやはや。奥が深いですね。小麦。。

 

冬小麦と春小麦のスプレッドは面白い

季節要因として、時期的に冬小麦は下落しやすく、春小麦は上昇しやすい、という時期があります。小麦相場全体の動きは、コーンや大豆の要因にも左右されますが、春小麦と冬小麦の値差を取引する(=スプレッド)トレードは毎年の再現性が得やすく、面白いストラテジーです。

別の機会に使えるストラテジーを紹介して行きたいと思いますが、本日はこのあたりで終えたいと思います。

ではでは。