中国によるコーン爆買い
こんにちわ。白戸則道です。
最近かなり暑くなってきましたね。初夏の気持ちいい陽気を通り越して夏が来た!って感じの日差しですね。
さて、本日は中国によるコーン爆買いについて説明します。
コーン価格の高騰
最近ニュース記事の中で目にされる人もいるかもしれませんが、コーン価格が高騰しています。以下は過去5年分の価格チャートですが、直近のレベルは1ブッシェルあたり7ドル64セントを超えています。ちなみに、39.37ブッシェル=1000kgですので、1ブッシェルは25kg程度です。
過去数年を見ても、コーンの価格は1ブッシェルあたり4ドルを超えると高値圏で、おおよそ3ドル代で推移していたところです。しかしながら、昨年の6月頃から少し様子が変わってきたというのが相場の状況です。きっかけは、中国による買い付けです。
暴騰のきっかけは中国の買い付け
もともと中国はそれほどコーンを輸入する国ではありませんでした。以下グラフは中国における国内需要量と輸入量を示したグラフです。赤ラインは総需要、青ラインは輸入量を示します。単位は千トンですから、中国の需要量は3億トン近いということがわかります。コーンの世界全体の消費量は年間11億トンですから、30%近くを中国がかなりの割合を中国が占めています。
巨大な需要を持つ中国ですが、元々中国はこの需要の大部分を国産コーンで賄っていたわけです。過去10年を見ると、ほぼ自給できていることが見て取れます。しかし、2020年は青のラインが少し上向きに伸びています。
上のグラフで見ると、青ラインの伸びがいまいちインパクトが見えづらいのですが、輸入量を需要量で割り返して、輸入割合のグラフを示します。これを見ると、過去10年は1−3%の輸入(=つまり自給率98−99%)で推移していたものが、今年は8%を超えているということが一目瞭然です。そして総需要が2.9億トンの国の8%ですから、23百万トンに達します。世界で貿易されるコーンの総量が3億トンですから、実に10%相当分が突然なくなることになったわけです。
コーンの世界生産量、及び貿易量は以下記事をご参照ください。
1年で10万ドルコースの大波
2020年の6月頃から始まったコーンの上昇はほぼ一年間継続し、実に4ドル/ブッシェルの上昇を見せています。シカゴコーン1枚は5000ブッシェルですから、4ドルの5000倍ですから、2万ドルの利益です。そして必要な証拠金は2,000ドル程度ですので、キャッシュオンキャッシュのリターンは10倍です。
そこまでレバレッジを効かせるのはリスキーですが、現実的に副業でやれそうなラインで考えると、2万ドル分を預けた上で、5枚程度のポジション(証拠金は1.5万ドル程度)を取ったとして、4ドルx5000倍x5枚=10万ドルです。
毎年こんな大波が来るわけではないのですが、数年ぶりの大相場だったと言えます。お恥ずかしながら、私は諸事情ありまして、この波に乗れず。悔しい思いをしております。
証拠金については以下記事をご参照ください。
アメリカ農務省の輸出量予測
現時点(2021年5月10日)で最新のアメリカ農務省予想値では中国のコーン輸入量は24百万トンです。2日後には更新版の数字が出る予定ですが、市場参加者の間では実際の輸入量はもっと多くなるのではないかという見立てがあります。
アメリカ農務省によるアメリカからの輸出数量予測、これは中国だけではなく日本向けも含めた数字ですが、4月発表時点で2,675百万ブッシェル(=68百万トン)です。2020年9月1日から20201年8月31日までの一年間の予想値です。
一方ですでに輸出されているものと、すでに売約済で今後8月末までに船積みされる予定のものについても、アメリカ政府が公表しています。この合計は、すでに2,671百万ブッシェルに達しており、99.9%が成約済ということになります。
しかし、例年4月の終わり時点からも新規成約はありますので、例年のペースを考えるとさらに100-130百万ブッシェル(=2-3百万トン)程度輸出量が増える可能性は高いです。
来年度も中国の爆買いは続くのか?
中国の爆買いの原因は何か?というと、中国国内のコーンの生産量の減少です。その原因は、洪水です。ですので20年度の突然の輸入増は一過性の要因ですので、来年には生産量は戻ってくる筈です。しかしながら、需要の伸びのペースは気になるところです。過去5年平均を見ると年率4.8%のペースで需要が伸びています。20年度の需要量は2.9億トンですから、4.8%で計算すると需要量は来年には13百万トン増となる計算です。これまでもそうであったように中国はコーンは可能な限り、自給する方向で動くでしょうから、生産量の増加でカバーされる可能性はあります。中国の農業の単収はそれほど高い水準ではありませんので、4.8%の生産量増加は、生産性の向上、作付面積の拡大でカバーできる範疇の筈です。
安心するにはまだ早い
注意すべきシナリオは、中国が農業生産性の向上、作付面積の拡大をタイムリーに実施できなかった場合です。しばらく耕作していなかった土地を再度作付に転用しても、急には想定通りのパフォーマンスは出せないそうです。もしかしたら、来年度も引き続き中国の買い付けが継続する可能性はあります。
まとめ
現在の穀物相場の高騰はファンドマネーによって押し上げられたものである、という見方もあるのですが、実需が多いという理由も多分にあると思います。今後さらに上がるという予想もあるため、引き続き上値を試す可能性もありそうです。