商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

相場を上げたのはファンド?

こんにちわ。白戸則道です。

先週のコーン相場は激動の動きを見せましたが、その前段階で誰が相場を上げていたのか、を振り返りたいと思います。

シカゴコーンは大暴落

5/10(月)の頭につけた730セントから、金曜日の引値まで643セントまで落ちました。一週間でこんな動くことあるとは驚きです。この下落は水、木、金の3営業日連続の続落でここまで落ちたものです。一体誰がこんな乱暴な売り方するのよ、、と疑問に思います。

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シカゴコーン7月限チャート

COTレポートを見てみよう

毎週金曜日の午後(アメリカの午後)にCOTレポート(コミットメント・オブ・トレーダーズ Committment Of Traders)というレポートが発行され、市場参加者の持ち高が公開されます。COTについては以下記事に趣旨をまとめております。 

sakimono-toushi.hatenablog.jp

ただし、COTレポートは毎週の火曜日終了後のポジションを、同週の金曜日に出してきます。つまり3日分遅れています。なので、水、木、金で売った人が誰なのか?については、確定的なことは言えません。しかし、火曜日終了時点で誰がどのようなポジションを持っていたのか、はわかります。

 

ファンドではなく実需筋が買っていた

COTレポートをみると、5月4日(火)から11日(火)にかけて、ファンドマネーのロングポジションは347,390枚から302,635枚に、45千枚近く減っています。一方で実需筋はショート7747,827枚から702,629枚に減っています。実需が買った分をアクティブファンドが売っていたという構図です。結果として5/4から5/11にかけて681セントから730セント前持ち上がったと言えます。

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COTレポートより抜粋(シカゴコーン持ち高)

 

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シカゴコーン7月限チャート

相場を上げたのは実需だが、下げたのは誰だ?

実需筋のカテゴリにおける大口プレイヤーは農家です。農家は現物が収穫される前に、シカゴである程度売りを建てておくという使い方をします。収穫時期になってコーンが暴落していると困りますからね。そして実需筋には現物を手当てするメーカーや商社も含まれます。メーカーは現物を製品の原材料として買い付ける必要がありますので、相場がジリジリ上がっていく中で手をつけたということなのだと推察されます。

では、誰が売ったのか、という話ですが、ファンドと実需が両方ともにわんさか売ったということではないかと推測します。

 

ファンドはすでにロングが溜まっていた

5月4日時点からポジションは縮小していましたが、それでも30万枚を超えるロングを保有しています。ファンドは最終的にはこれをゼロに持っていくこともある人たちですから、よきタイミングで売る必要があります。そして先週のUSDAレポートを見て、ある程度の上値材料が出尽くしたとみて売りを開始したのだろうと思われます。

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COTレポートより抜粋(シカゴコーン持ち高)

農家も売りに参加したのではないか?

農家の目線に立って考えれば、相場が大きく下がっていく気配をみると売りを建てておくべきかという思惑も働くと思います。そうすると実需筋としての農家も一緒になって売りを建てた可能性はあります。ただし、これは7月限というよりも9月限や12月限ではないかと思います。なのでやはり7月限を下げた主因はファンド売りという結論になると思います。

ここからの展望

完全に私見ですが、もう少し売りの勢いが続く可能性はありそうです。先週時点で作付はかなり進捗していますし、今週末もそれなりに作付が進んだとすれば、月曜日時点では次年度作のクロップの状況に対する不安感が大きく後退する可能性はあります。そうすると、フォロースルーでもう少し売りが立つ可能性はありそうです。週末のお天気がどうなるか気になりますね。