商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

証拠金(マージンマネー)とはなんぞや

こんにちわ。白戸則道です。

 

商品先物を取引するにあたり、避けては通れないものとして証拠金があります。本日は証拠金について説明します。

委託証拠金(Initial Margin)

先物取引は、将来時点での現物の買取、販売を約束する取引です。従い、約束を取り決める時点で支払額の満額を用意する必要はありません。しかしながら、全くお金がない人に売り買いの約束をしてもらって後で反故にされることが多発すると市場が混乱します。そこで、売りであろうが、買いであろうが、取引を開始する前には、その取引数量に応じて一定の金額をブローカーの口座に入金しておくように求められます。つまり初期段階(Initial)でもっておく必要がある証拠金(Margin)ということです。これは市場が設定しているルールで、1枚あたりいくらというルールになっています。ポジションが増えれば、損失を出すリスクも高まるため、相応に口座に入れておく金額も増えるということです。

商品取引の場合、必要とされる証拠金は原資産の金額の約 5-15%程度です。つまり、6倍〜20倍のレバレッジをかけることが可能です。ブローカーによる審査など全くありません。誰でもレバレッジかけられます。後述しますが、ギリギリの証拠金でポジションを張ると追加証拠金が追っかけてくるのでレバレッジの程度は要注意です。

維持証拠金(Maintenance Margin)

Initial Marginを口座に入金し、いざポジションを持ったとしましょう。相場ですから一本調子に上がる・下がるとは限りません。損失が出る可能性があります。一日の取引が終了するタイミングで損失が出ていた場合に、Initial Marginいくらか食い潰される形になります。この場合、ポジションを維持する(Maintenance)するための証拠金( Margin)として、必要金額が計算されます。商品によりますが、1枚あたりの金額はInitial Marginの80%程度で計算されます。また相場の動きに応じてブローカーが一枚辺りの証拠金の設定を変えます。相場の変動が大きい時には、1枚あたりの維持証拠金の額は大きく、逆の場合は小さくなります。

評価損を抱えた状態でポジションを維持するには、口座に現金相当物を補充する必要があります。これを追加証拠金(追い証)と呼ばれる、恐怖の通知です。追加証拠金を納めることができない場合は強制的に手仕舞いさせられます。一時的に評価損が出ているが、後で盛り返す筈というのを待てずに損失を確定させることになります。

事例 コーンを3枚買うとき

Initial Marginが 一枚辺り2,000ドルであったので、10,000ドルを入金して、5月限コーンを7ドル/bu(ブッシェル)で3枚買いポジションを建てた。1枚辺り5000bu(ブッシェル)

翌日、相場が6.5ドル/bu(ブッシェル)まで下落。この時点で評価損は0.5ドル/Bu。つまり0.5ドル/bu  x 5000bu  x 3枚 = 7,500ドルの評価損。

口座に入金している証拠金 10,000 ドル から この日の時点の評価損 7,500ドルを差し引くと現在有効な証拠金の残高は2,500ドルのみ。

同日のMaitenance Marginを1枚辺り1,600ドルとして、ブローカーから3枚のポジションを維持するためには、1,600ドル/枚 x 3枚 = 4,800ドルの証拠金残高になるように、追加証拠金を2,300ドル支払うように連絡が来る。

しかしながら、同日中に入金できず、3枚のポジションは強制手仕舞いさせられ、7,500ドルの損失が確定。口座残高は2,500ドルに減少。

一週間後、当初の思惑通り相場は上昇。残念ながら利益を得ることはできなかった・・

解決策 コーン2枚の買いにしておけばよい

上記は、やりきれない状況を設例しましたが、解決策はシンプルです。証拠金額に合わせて取るポジションを減らしておけばよいのです。もし上の事例で1枚だけにしておけば、損失は5,000ドルです。10,000ドルの証拠金があれば、まだ5,000ドルの残高は残りますので、ギリギリ耐えられます。あるいは損失限度の逆指値オーダーをもう少し浅く入れておくという手もあります。

ポジションを取る枚数とオーダーのテクニックで、マネージする必要があります。この辺りは慣れないうちは慎重に行う方がいいです。いきなり大きなポジションで勝負するのではなく、少しずつ手元のお金を増やしつつポジションを大きくしていくのがよいと思います。

オプション取引の証拠金

これは上級者向けテクニックですが、現物ポジションと反対ポジションに相当するオプションを売り買いすることで、必要な証拠金を減らすことができます。ほとんどのブローカーがSPAN(Standard Portfolio Analysis of Risk)という手法で証拠金額を計算しています。これは起こりうると想定される値動きやボラティリティに対して、そのポートフォリオがどの程度の損失を出しうるか、を計算しているものです。SPAN自体は取引所を運営しているCMEグループが開発したもので、マーケットのボラティリティやイベントリスクなどを加味して毎分変動するものです。ブローカーの提示しているトレードツールの中で表示されますが、計算式は複雑、だそうです。

例えば現物の買いと逆行するオプションを組み合わせることでそのポートフォリに求められる証拠金額を減らす事ができます。状況によりますが、3枚の現物買いに対して、3枚のプットオプションの買いを組み合わせることで、必要な証拠金は1枚分だけに減ることがあります。つまり、それだけ取れるポジションの枚数を増やせる=レバレッジをさらに高める事ができます。

但し、オプションを買う際には、即時にオプションのキャッシュアウトが発生することは要注意です。

まとめ

証拠金は現物取引をするメリットであるレバレッジを与えてくれるものです。現物資産の5-15%程度でポジションを持てる、しかも売り買い、どちらからでもポジションを建てる事ができる、というのはすごく便利なシステムです。しかしながら、うっかり失敗すると大怪我をするので、最初は1枚とか2枚の小ロットで練習することをオススメします。

最初は小さく始めて、マーケットの感覚を体に染み込ませてから、大きなチャンスを待ちましょう。