商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

穀物相場の季節戦略

こんにちわ。白戸則道です。

本日は穀物相場の季節トレンドについて解説します。

穀物には毎年の生育パターンがある

穀物一年草ですので、毎年作付され収穫されます。すると収穫期の直後は実物が豊富にあるため、価格が下がります。その後今後の作付けのタイミングに向けて価格が上がっていくという構図が生まれます。年によって、程度の差はありますが、収穫直後の”ものがある”という安心感は価格の高騰を引き起こしずらい状況を生むというのは真理だと思います。また次年度の作付がどうなるのか、不透明であるという状況はリスクが多々目に付く状況ですので、価格が上がりやすくなるというのも納得感はあります。

春の作付

作付面積が決まる

大豆とコーンは春に作付けをします。北半球の大豆、コーンの主要産地であるアメリカでは4月から6月にかけて作付時期を迎えます。この時期は作付に適した天候かどうかが相場関係者の注目を集めます。作付けに使用する大型農機はかなり重量がありますので、降雨が多すぎるとぬかるんでしまって、畑に入れなくなります。かといって、雨が少なすぎる場合は、作付した種子が発芽するだけの表層水分がない状態になってしまいます。適度に雨が降るのがベストです。

洪水が発生することもある

アメリカ中西部は、冬には雪が積もります。それらが春に雪融け水として土壌に蓄積され、そこにさらに春に雨が降り続くと、洪水が起きることもあります。一度作付した土地に川の水が氾濫するということも時々起こります。

夏の生育

降雨量

作付が完了したあとは、7月−8月の作物の生育期に入ります。Rain makes grain(雨が穀物を作る)という諺があるそうで、やはり一番重要な要素は、降雨です。この時期には、降雨量が足りているかどうか、が大きな注目材料となります。

受粉

夏の暑い時期に差し掛かると、大豆もコーンも受粉期に入ります。この時期には乾燥が懸念されます。日本のような湿気のある夏とは違い、アメリカの中西部エリアは高温乾燥となることがしばしばあります。受粉するには、花粉が雌しべに付着する必要がありますが、高温乾燥状態は、雌しべの水分を奪ってしまいます。すると花粉が飛んできても雌しべに付着出来ず、受粉障害と言われる状態になってしまいます。すると、実の数が少ないスカスカのコーンや大豆になってしまうわけです。

秋の収穫

霜害に注意

受粉期を乗り切ると、次は収穫の秋を迎えます。9月から10月が収穫期です。南部エリアから北部エリアに向かって収穫作業が進捗していきます。収穫期に心配されることは、霜害です。日本の秋でも霜が降りることはありますが、アメリカの中西部は秋が短いです。猛烈に暑い夏が過ぎて少し気温が和らいだと感じる頃には、すぐに冬の豪雪がやってきます。ある程度作物の身が成熟したあとには、立ち枯れさせて実を乾燥させる期間が必要なのですが、この立ち枯れを待つ間に、霜が降りることがあるのです。

作物が濡れるとダメージ品になる

大豆の場合、鞘に霜がついてしまうと、鞘の中にある実も水を吸います。秋とはいえ、日中はそれなりに気温が上がりますから、気温が上がったタイミングで水分が蒸発していく時に一緒に余分に水分が抜けることがあります。そうすると実がカリカリに乾いてしまい、穀粒が小さくなってしまうという現象が起きます。つまり、単位面積あたりの生産重量が落ちてしまう、ということいなります。

コーンは大豆よりも収穫時期が遅いので、霜や降雨に捕まると収穫が出来ない可能性もあります。作物が濡れてしまうと、乾燥するのを待つことになりますが、秋が深まってくると日中の気温が高くならず乾燥に時間がかかります。一日雨が降ると、この乾燥を待つ間に再度雨が降るなど、なかなか収穫できないという事態が起きることがあります。特に北部州では雪が降り始めるのも早いので厄介です。

 

季節性トレンドを基にした戦略

4月ー5月はロング

春は不確定要素が多く、不安材料を見つけるたびに上昇する傾向があります。もちろん、ある程度の上がると売りを建てる人が現れるので、一本調子に毎日上がるわけではありませんが、トレンド方向としては上昇トレンドが形成される確率が高いです。

8月ー9月はショート

作付が完了し、生育が進んでいいく時期ですので、日々状況が確定していきます。つまりリスク要因が減っていく時期ですので、収穫期に向けてリスクプレミアムがハゲる形で、相場が下落していく可能性が高いです。穀物相場の場合、上昇するときは急騰しますが、下落は緩慢なペースでじわじわ落ちます。じっくり構えましょう。

10月はロング

収穫期になると、霜害の心配はあります。これによりダメージを受けて単位面積あたりの収穫量が落ちるという懸念は多少はあります。しかし、アメリカ全土で一様にダメージを受けるということはありません。収穫期に来れば、生産量の下方リスクはかなり限定的です。このタイミングで穀物相場は一年で最も安くなる可能性が高いので、ロングを仕込む時期と言えます。

小麦は大豆・コーンとサイクルが異なる

大豆とコーンは春に植えて秋に収穫という季節サイクルがありますので、毎年相場の動きがある程度読みやすい傾向があります。一方で、小麦は少しややこしいです。というのも、冬小麦と春小麦があるため、地域によって作付時期が異なります。さらに言えば、シカゴ相場以外にもカンザス小麦相場やミネアポリス小麦相場があるため、一概には言えません。ただ、シカゴ小麦についていうならば、主要穀物、というカテゴリで捉えられることが多く、コーンとの比価、大豆との比価で割安になると買われるという性質があるので、大豆、コーンに連動する傾向が強いです。

まとめ

穀物一年草である、という性質から、相場の動きがある程度予想出来るというお話でした。しかしながら、少し思惑と違った動きを見せると、狼狽売りに走るというのは人の常です。相場の動きの予想よりも、自分の心の動きをコントロールする方法が重要なのかもしれません。