商品先物投資のススメ

大手商社穀物担当が副業としての”商品先物投資”を解説します

ブラジルの旱魃によるコーン減産

こんにちわ。白戸則道です。

本日はブラジルでのコーンの減産について、解説します。

ブラジルは大豆・コーンの輸出大国

ブラジルは世界的な農業大国です。大豆は、生産量、輸出量ともに世界1位です。コーンは生産量世界3位、輸出量世界2位です。コーンは生産量にして1億トン、大豆は1.3億トンに上ります。ブラジルおよびその他主要生産国については、以下記事をご参照ください。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

sakimono-toushi.hatenablog.jp

ブラジルの3つの生産エリア

ブラジルは南北に長い国土ですが、大豆コーンの主要生産エリアは、3つに分けて捉えることができます。一つ目は最大の生産エリアである中西部エリアです。内陸部ですので、旅行者はほとんど行かないと思いますが、実にブラジルの生産量の50%相当を占めます。次に、南部エリアおよび南東部エリアが40%で続きます。この辺りは沿岸部ですので大都市も多いです。有名なところで行くとサンパウロ、サントス、リオグランデなどはこのエリアにあります。最後に北部エリアですが、比較的歴史の浅い新興開拓エリアです。しかしながら、この辺りは人口が少なく、土地がわんさかあります。農家の皆さんはせっせと農地を買い取り作付面積を拡大しており、生産量が急拡大している地域です。

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ブラジルの地域ごとの大豆・コーン生産割合

ブラジルでは二期作を実施

ブラジルは南半球の国ですので、北半球の我々とは季節が逆転します。そして南北に広い国で。特に北中部地域は、緯度が低く気温が高いです。この北部エリアでは、二期作が可能です。以下に作付時期のテーブルを記載します。

北部地域でよくあるパターンは一期作目は大豆を作付し2月から4月にかけて収穫します。収穫した直後に同じ畑に二期作目のコーンを植えるという、二毛作と言われるやり方です。コーンは地中の窒素分を大量に消費する作物ですので、連作せずに間に大豆を入れることで大豆の根にいる、根粒菌が空気中の窒素分を土の中に固定してくれるという効果もあります。

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ブラジルの作付時期カレンダー

2021年5月現在、旱魃が発生中

前置きの基礎情報の説明が長くなりましたが、いよいよ本題です。現在(2021年5月)ブラジルでは二期作目のコーンが生育期を迎えています。そろそろ受粉して実をつけるというタイミングですが、雨が降っておらず、旱魃が懸念されています。

下は、今後10日間の降雨予測です。図は、過去平均レベルの降水量が降る確率を表しています。つまり白いエリアは平年並みの降水量、赤いエリアは平年よりも降水確率が低いということになります。上で示した主要生産地域の地図と照らし合わせてみるとわかりますが、まさに中西部エリアに乾燥予報が出ていることが見てとれます。

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2021/5/11-5/19の降雨予測

現在ブラジルでは二期作目のコーンの受粉期

大豆はすでに収穫完了しているので、大きな影響はないのですが、現在コーンの受粉期を迎えています。受粉期の高温乾燥は、単収の低下を招来ます。というのも受粉するには雌しべに花粉が付着する必要があるのですが、あまりにも暑いと雌しべが乾燥してしまって花粉が付着できなくなることが起きます。

どのくらい減るのか?

アメリカ農務省の4月の発表では、ブラジル産コーンの生産量は109百万トンでした。しかしながら、先週から昨日にかけてブラジルの調査会社Ag Rural社が出してきた数字は96百万トンです。実に13百万トン減少です。

世界の貿易量の1割減

世界のコーン貿易量の約180百万トンですので、その1割弱、世界3位のコーン輸入こである日本の一年間のコーン輸入量16百万トンの8割に相当します。これが現在の市場でどのように受け止められているのかは不明ですが、この予想数字とブラジルでの旱魃の天気図はショッキングな内容です。

市場予想平均は103百万トン(6百万トン減)

本日アメリカ農務省報告が出ますが、市場の事前予想平均では、事前予想の平均は103百万トン、市場予想の下限値でも99百万トンとされています。もしアメリカ農務省がブラジルのコーン生産量を99百万トンよりも下げてくると、大きなサプライズと受け止められて、相場が強くなる可能性はありそうです。

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アメリカ農務省予想前の市場参加者の予想

 本日の発表にあたり事前予想をまとめた記事は以下ですので参考にされてください。

sakimono-toushi.hatenablog.jp

まとめ

ブラジルの減産幅として、前回のアメリカ農務省の数値109百万トンをベースにすると、AgRural社が一昨日出してきた数字96百万トンは13百万トン減少となります。本日のアメリカ農務省報告ではそこまで大きな減産を見込んだレポートにはならないかもしれませんが、今後ブラジル側での予想が確からしいとみられる場合には、世界の期末在庫はかなりタイトになる可能性があります。基礎穀物の値段が上がると遅れて実生活にもじわりと値上がりが来ますので、要注意ですね。。